人の善意・同情心に付け込む電話トークが巧み
J-CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した国民生活センター相談情報部の安井大智(やすい・たいち)さんに話を聞いた。
――毎年年末が近づくと、海産物の強引な電話勧誘トラブルが起きていますが、そもそもなぜ、農産物でなくて海産物なのでしょうか。
安井大智さん 海産物だと特別感が出るからでしょう。農産物なら、近くの八百屋やスーパーですぐ買えますが、タラバガニやズワイガニはそう簡単には手に入りません。しかも、農産物は安いです。儲けを考える事業者にとって、海産物だと1ケースで数万円の値段をつけられますが、大根や白菜、リンゴや柿で数万円分の値段をつけるとなると、かなり大きな梱包となってしまいます。
実は、今回の報告書は悪質業者の摘発に力を入れている北海道警察本部と合同で出しております。海産物を送り付けてくる業者の送付状をみると、北海道内からが非常に多く、実際、今年6月、北海道警察本部が特定商取引法違反で札幌市内の会社役員らを逮捕しています。
北海道の人にとって、海産物はすぐ近くで買えるので、被害相談はほとんどなく、大半が本土の人々です。
――なぜ、見知らぬ業者からいきなりかかってきた電話で、数万円単位の海産物を買ってしまう人が多いのでしょうか。
安井さん 消費者の善意・同情心に付け込む電話トークが非常に巧みなのです。少し前までは、「東日本大震災の被災地の漁業を救ってください」とか「福島の復興に協力してください」とか「コロナの影響での商品が売れなくなった業者を助けてほしい」という訴えが多かったです。
現在多いのは、「福島原発の処理水で、風評被害に遭っている業者を助けてほしい」とか「中国やロシアが日本の水産物輸出をストップしたため、ホタテやカニが売れなくて困っています」とか「中小の漁業者の倒産が相次いでいます」といった決めセリフです。
電話口でそういわれると、「それならば」と心を動かされる人が多いのです。