2023年の司法試験の合格者が11月8日、発表された。合格者の総数は1781人。うち、「司法試験予備試験」を通過しての合格者は327人だった。
予備試験は2011年にスタートした。法務省の公式サイトによると、「法科大学院を経由しない者にも法曹資格を取得する途を開くために設けられた試験」。法科大学院を修了せず受験、合格した今年の「最大派閥」が予備試験通過組だった。この状況に、法科大学院経験者は何を思うか。J-CASTニュースBiz編集部は、法科大学院が始まった04年から2年後に入学するも、いまだ司法試験への合格を目指す40代男性のAさんに取材した。
法科大学院への進学は「失敗とは思っていません」
予備試験の受験資格や受験期間の制限は、一切ない。今年だけでなく2022年も、予備試験通過組の司法試験合格者が395人(全受験者は1403人)に達した。あくまでオルタナティブな道だったはずが、いつの間にかメインストリートになったようにも思える近年の状況だ。
Aさんは世に言う「就職氷河期世代」とされる1981年生まれ。2006年に法科大学院の未修者コース(3年制)に入学し、これを修了。当初の受験制限である「法科大学院修了後5年以内に3回」受けられる司法試験に臨むも、いずれも不合格だった。その後、生活費を稼ぎながら別の法科大学院への入学、もしくは予備試験の受験を検討しつつ、今日に至る。
今も合格を諦めていないと語るAさんに、少々厳しい質問をぶつけた。長い年月を経てなお合格していない以上、法科大学院に行ったのは自身の人生において失敗だったと思うか――。
「法科大学院が始まった当初は、出版関係や医者、自営業者など、必ずしも法律の職とはあまり縁のない社会人は今よりも珍しくなかったため、当初の司法制度改革案でうたわれていた『多様な人材の確保』はそこそこ達成されていたと思われます。そのバラエティーの幅の広さが面白かったのと、肝心の勉強もきちんとできましたから、失敗とは思っていません」
「ただ、かつて政府が、『合格者が当初は8割になるように』と言っていたにもかかわらず実際にはそうなっていないのは、広い意味で法科大学院受験生との『約束違反』だとは思います」
実際、法科大学院の設置前には、政府が「合格率8割」を想定していた時期があった。当時の報道を振り返ると、例えば産経新聞2003年11月22日付東京朝刊の記事には、「文科省が掲げる『司法試験合格率七-八割』」といった文言が見られる。