若者よ「シングル高齢者研究」結果を見よ 男性のうち経済困窮1位は未婚、一方、ポジティブ1位は未婚女性

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   「結婚したくない」という若者が増えているが、果たしてシングル高齢者が老後にどんな末路を迎えるかを考えているのだろうか。

   結婚せずに「未婚」で通したシングル高齢者には、男女でトンデモなく大きな差が出るという研究結果が出た。

   「未婚男性」には、経済的な困難が待つ一方、「未婚女性」には人生100年時代を輝かせる花の老後が待っているという。どうする、若者たち?

  • 幸せな将来を夢見るなら…
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  • 坊 美生子さん
    坊 美生子さん
  • (図表1)性・年齢別に見た配偶関係別構成割合の変化(ニッセイ基礎研究所作成)
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  • (図表2)配偶関係別に見た高齢者の年金受給状況(ニッセイ基礎研究所作成)
    (図表2)配偶関係別に見た高齢者の年金受給状況(ニッセイ基礎研究所作成)
  • (図表3)配偶関係別に見たシングル高齢者の歩行習慣(ニッセイ基礎研究所作成)
    (図表3)配偶関係別に見たシングル高齢者の歩行習慣(ニッセイ基礎研究所作成)
  • (図表4)性・配偶関係別に見た希望の寿命(ニッセイ基礎研究所作成)
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  • (図表1)性・年齢別に見た配偶関係別構成割合の変化(ニッセイ基礎研究所作成)
  • (図表2)配偶関係別に見た高齢者の年金受給状況(ニッセイ基礎研究所作成)
  • (図表3)配偶関係別に見たシングル高齢者の歩行習慣(ニッセイ基礎研究所作成)
  • (図表4)性・配偶関係別に見た希望の寿命(ニッセイ基礎研究所作成)

未婚の高齢男性の4割「資産100万円以下」

   この研究調査は、ニッセイ基礎研究所研究員の坊美生子(ぼう・みおこ)さんが2023年11月8日に発表した「シングル高齢者の増加とその経済状況~未婚男性と離別女性が最も厳しい」というリポート。

   リポートによると、未婚率の上昇や離婚件数の増加によって、配偶者がいないシングルの高齢者が大幅に増加している。

   たとえば、男性の65歳でみると、1985年時点では「未婚」(結婚したことがない)がほとんどなく、大雑把に言うと、9人が「有配偶」(妻がいる)、1人が「離別または死別」という状況だった。ところが、2020年には「未婚」が増え、10人中1人が「未婚」、8人が「有配偶」、1人が「離別または死別」になった。

   女性の65歳も同様で、1985年時点では「未婚」や「離婚」は5%以下、死別(33%)を除けば、シングルは少数派にすぎなかった。ところが、「未婚」と「離別」が次第に増加し、2020年時点では、大雑把に言うと、10人中1人が「未婚」、7人が「有配偶」(夫がいる)、1人が「離別」、1人が「死別」という状況になった【図表1】。

   そんななか、子や孫と一緒に暮らす高齢者が少なくなり、経済状態の厳しさが増している。そこで、シングル高齢者の「年金受給状況」「年収」「世帯の金融資産」「雇用形態等」の4つの指標を調べた結果、男性では「未婚」の人、女性では「離別または死別」の人が概ね、経済的に最も厳しい状態に置かれていることがわかったという。

   しかし、興味深いことに、女性では「未婚」の人の経済状況は、「離別・死別」という「結婚したことがある人」より、良好という結果が出た。現在、「結婚したくない」という若者が増えているが、いったいこれはどういうわけだろうか。やはり、男性は結婚しておいたほうがいいということか。

   J-CASTニュースBiz編集部は、ニッセイ基礎研究所研究員の坊美生子さんに話を聞いた。

――この調査結果では、老後の経済状態を考えると、男性では「未婚」が最も厳しいという点が衝撃です。やはり若い時に結婚したほうが幸せな老後を迎えられるのでしょうか。それとも、もともと経済的に困難な人が多くて、未婚のまま老後を迎えたから「最も厳しい」のでしょうか。つまり、「未婚」であることが。老後の経済的困難の原因ではなく、結果であるということでしょうか。

坊美生子さん 後者だと思います。若い時に経済的に苦しくて、結婚を希望している人も、結婚まで到達できなかったことが、そのまま現在まで響いた結果と考えています。未婚のままシニア世代を迎えた男性の、現在または現役時代の雇用形態をみると、「派遣社員・契約社員」と「パート・アルバイト」を合わせた非正規雇用の割合が1割を超え、男性全体より高いです。

また、年金の受給状態も非常に悪いです。「0円」が14.8%もおり、男性全体(4.6%)の3倍以上です。年に「50万円未満」の人が約26%、4人に1人以上もおり、男性全体の約2倍。また、預貯金などの資産を見ても、「100万円未満」しかない人が約4割(35.8%)に達して、こちらも全体の約2倍です【図表2】。

この状態はかなり深刻です。というのは、老後に困窮するリスクの高い「未婚の男性」がこれからどんどん増えるからです。現在、65歳以上のシニア世代が若い頃は、高度成長経済の時代でした。しかし、その後、バブルが崩壊して、就職氷河期に入ります。今の40代から50代前半の「未婚の男性」のボリュームはかなり大きいです。

――ところが、女性の場合は夫と離婚、または死別した「離別・死別」が経済的に最も厳しいという結果が出ましたが、「未婚」の場合は、必ずしも男性のように厳しくなりませんね。これは、どういうわけですか。

坊美生子さん 実は、女性の場合、資産状況を見ても、「100万円以下」という低資産層は、「未婚」が最も少なくて、次いで「配偶者あり」「離別・死別」という順番になります。

これは、未婚の女性は、結婚・出産・育児などでキャリアが途切れることがないため、「正社員」のまま働き続ける割合が高く、約4割と、他の女性に比べ、2~3倍に達するからです。こちらは男性とは逆に、現役時代の比較的安定した経済状態がそのまま老後に反映されるわけですね。ただし、男女格差が大きい時代に働いていたので、男性に比べれば賃金水準は低かった訳ですが、そんな中でもしっかり資産形成してこられたようです。

私が前に勤めていた新聞社でも、結婚後に辞める女性記者がいました。近年は、どこの企業でも、両立支援や働き方改革が進んできたため、ライフイベントを機に退職する女性は減りましたが、少し前までは、やはり、未婚の方が女性は正社員を続けやすいというのが、実態だったと思います。
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