「本来は有権者の思いを受け取るのが政党です」
「保守党は少なくとも左派政党でないことは明白です。そして、自民党が広く保守全体のポジションを握っているわけですよね。基本的には、保守で入ってきても自民党にのまれる可能性が高く、ターゲットとなるのは自民党よりもさらに右寄りのごく一部の層に限られるため、保守党がとくに小選挙区制で勝つのは、制度的・実質的にほぼ不可能だと思います」
小選挙区ではなく比例代表制で議席を取る場合、秦氏は「保守党の場合は、やはり認知度勝負になります」とし、さきほどの世論調査の結果を踏まえて「(保守党や百田氏の)認知度はそこまで高くない」と現状を分析。また、支持層は百田氏らを元々知っていた層ではないかと推測し、新たな層を掘り起こしている感じはしないとする。
「自民でも維新でもなく、より強い右派色を強調する政党がほしいと思っている支持層を基盤に、保守党が比例で勝負する場合、参議院選挙の比例でいえば全国で政党名と個人票あわせて100万票近くを獲得する必要があるわけです。ですから、党員が5万人ほど集まったとしても、衆議院であれば地域ブロック別になるので基盤となる5万人が分散してしまう形になりますし、参議院の全国比例であっても、5万人から100万票近くまで、およそ20倍に支持を広げるのはそう容易なことではありません。テレビや新聞などへの露出を増やして、他の主要政党(主に、自民・維新)よりも政策的に望ましいことをアピール・説得して、さらに投票行動にまでつなげるのはかなり難しいというのが実際のように思います」
保守党が議席を獲得するためには、どのような方針を取る必要があるのか。
「政党にとって一番大事なのは、結局どのような支持基盤を取りたいかということです。保守党は『一部の支持層だけでいける』というやり方をしているように見えますが、大きくて強い政党を目指すのであれば、特に有権者の半分近くを占める中道層を取りにいく必要があります。有権者の約85%が中道・中道右派・中道左派にいるわけですので」
また、中道あるいは中道右派層の支持を狙うためには、政党が有権者に寄り添う態度も必要だと述べる。秦氏は「政党は国民に啓発したり啓蒙したりする機能も一部あるとは思うんですけど、やはり、有権者の思いを受け止める役割も極めて重要です。有権者が政党に合わせにきてほしいという方法では、勢力はなかなか大きくならないのではないかと思います」と説明した。
「有権者が一番興味があるのは、経済政策なんです。外交・安全保障や価値観に関する政策を主張することはもちろん重要なんですけれども、やはり多くの有権者を獲得しようとすると、一番打ち出すべきなのは経済政策です。他の政党にはない、魅力的な経済政策を打ち出していかないと、多くの有権者はなかなか投票候補先の一つに入れてくれないんですよね」
ただし、秦氏は、移民や外国人労働者、インバウンド(訪日外国人客)が治安を悪くするなど社会状況の変化が起こった場合、保守党が人気を博す可能性はゼロではないとしつつも、「世論調査の結果を踏まえると、現状として勢力の拡大は難しいのではないか」と話した。