コロナ禍の影響で減少していた訪日外国人客数が、ついに単月ベースで「コロナ前」の水準を上回った。背景にあるのが円安で、19年10月は1ドル=110円程度で推移してきたが、23年10月は150円程度で推移。割安感が日本への旅行需要を後押ししている。
ただ、かつては「爆買い」の主役だった中国からの観光者は回復途上で、コロナ前の35%程度の水準だ。「伸びしろ」が大きいといえる一方で、オーバーツーリズム(観光公害)への対応も急務になりそうだ。
1人あたりの支出額は4割増
日本政府観光局(JNTO)が2023年11月16日に発表した23年10月の訪日外国人客数(推計値)は251万6500人で、「コロナ前」の19年10月の249万6568人を0.8%上回った。
集計対象の23市場のうち、14市場(韓国、台湾、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、ドイツ、イタリア、スペイン)で10月としては過去最高を記録。そのうちカナダ、メキシコ、ドイツでは、単月ベースでも過去最高を記録した。
国・地域別で最も多かったのが韓国で63万1100人(19年同月比3.2倍)、台湾が42万4800人(同2.7%増)と続いた。次に多かったのが中国の25万6300人だが、19年10月の73万631人と比べると64.9%減だ。19年10月は中国からの訪日客が最も多く、全体の29.7%を占めていた。
中国では23年8月に日本への団体旅行が解禁されたばかりなのに加えて、東京電力福島第1原発の処理水放出が影響している可能性もある。
観光庁が10月18日に発表した23年7-9月期の訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人旅行消費額は1兆3904億円。19年同期を17.7%上回っている。国籍・地域別で最も多いのが中国で2827億円だが、19年の4922億円と比べると57.4%にすぎない。一方で、中国人観光客の1人当たりの支出額は28万4934円で、19年比40.0%増。順調に観光客数の回復が進めば、さらに消費は伸びることになりそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)