任天堂「スーパーファミコン」(スーファミ)は2023年11月21日、発売から33年を迎える。実は今、スーファミのソフトの中古価格が高騰していることをご存じだろうか。実際に複数のインターネットオークションサイトや転売サイトを確認すると、少し探すだけでそのような例が複数見つかった。
スーファミ以前の「ファミリーコンピュータ」(ファミコン)ソフトも、同じ現象が起きているようだ。J-CASTニュース編集部は、ファミコンソフトの収集を始めて数年になるという40代男性会社員・MASAさんに話を聞いた。
発売時の価格を大きく上回る出品
スーファミの中古ソフトをネットで探すと、例えば1995年に発売された「クロノ・トリガー」が2万9880円で転売サイトに出品されていた。発売時の価格1万2540円の2倍以上だ。ただ、価格の振れ幅は非常に大きく、発売当時の価格を大きく下回るものもあるため値段は「ピンキリ」といったところだ。何が原因でここまで広がっているのか。
MASAさんはファミコンの全タイトル1053本のうち、約220個を所有。「自分はまだまだビギナーですが」と前置きしながら、ファミコンやスーファミソフトの中古品の値段のつき方には、基本的に同じメカニズムが働くと語る。価格が高騰する最大の要素は、ソフトを梱包している「箱」にあるという。
「ソフトが正しく起動したり、カセットや説明書が奇麗に保存されているのはそれほど珍しくないため、これ自体で高値が付くことはほとんどありません。これらの基礎的要素を満たしつつ、かつ、『箱』が奇麗だからこそ、プレミアがつくのです」
どういうことなのだろうか。
「ファミコンのパッケージは、主に紙製の外箱とプラスチックのインナーケースで構成されていますが、特に重要なのが外箱。紙でできているがゆえに、少しぶつけただけで凹んだり、塗料がはがれて『白欠け』することが多く保存が難しい。ゆえに経年劣化や傷みがなく、ツヤと張りのある奇麗な外箱に骨董品的な価値が出ているのです」
廃業した玩具店の倉庫からレアな未開封新品が大量に"発掘"されることもあり、中古市場は大いに沸き立っている。40年たってなお、美品として現存するがゆえに価格が高騰すると説明するMASAさん。壺などの割れ物が、時を超えて形を留めていることで骨董品としての価値を増していくことに通じると説きつつ、以下のようにも語った。
「レトロゲームはもちろん遊んでも面白いのですが、生産が終了して二度と作られない製品であるため、欲しがる人が存在する限りは値上がりが見込めます。趣味に加えて、ちょっとした『資産形成』の意味も込めて買い集めています」
「ゼルダの伝説」第1作は19万9800円!
MASAさんは、所有するコレクション約220本のうち、高値で取引されている7本を挙げてくれた。(現在の中古市場での取引価格は、記事作成時に編集部が確認)
・『ゼルダの伝説』新品未開封(ディスクシステム):5万円~19万9800円(発売時価格:4900円)
・『ドラゴンクエスト』新品未開封:6万円~8万円(発売時価格:5500円)
・『ホーリーダイヴァー』新品未開封:2万6500円~6万円(発売時価格:6050円)
・『スーパー魂斗羅』新品未開封:3万5000円~6万円(発売時価格:6380円)
・『ドンキーコング』新品未開封(銀箱):3万3300円~5万3000円(発売時価格:4950円)
・『地底探検ゲーム スペランカー』新品未開封(ポップ付き、発光ダイオードあり):1万3000円~8万円(発売時価格:5390円)
・『グーニーズ』新品未開封:5万円~8万円(発売時価格:5390円)
タイトルを一通り挙げたあと、MASAさんはそれぞれの高値の秘密を下の順位のものから語り始めた。
「スペランカーは発売当時のポップが箱についたままなのがプラス要素。ドンキーコングはファミコンのローンチタイトルとして赤い小箱が発売された一方、そのあとに銀色の箱で再販売されました。いわゆる銀箱ソフトの中には発売本数が少ないものもあり、かなりのプレミアがついているんです。ゼルダの伝説はディスクシステムがシリーズ第1作ですが、ディスクシステムは開封すると必ずシールの剥がし跡が残る仕様のため、未開封品は高値がつきやすいです」
なお、MASAさんが購入したファミコンソフトの現在の中古市場価格は多くが入手時より値上がりしているということで、MASAさんは「いい買い物をしたと思っています」とニッコリ。そして、最後にこんな話をしてくれた。
「私が持っている初代ドラクエは『新品未使用品』を購入したものですが、これはあくまで出品者の自己申告です。そのため、中古市場では未使用品であることを認定する鑑定機関もあり、専門家による『鑑定書』が付いた黒光りしたドラクエが83万円台で売れたケースをフリマアプリで見たことがあります」
(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)