映画監督の北野武氏が2023年11月15日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見を開いた。
11月23日に6年ぶりの新作「首」が公開されるのを前に開かれた会見だが、第一声は「初めまして、ジャニー北野川です」。記者からの質問に答える形で旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)をめぐる問題や、芸能界とメディアのあり方にも言及。日本の芸能界は「昔からひどいもんだとは思っていた」、メディアと大手プロダクションの癒着は昔から目に余るものがあり、「日本の芸能界のダークな部分」だと指摘した。
「それは当然あるだろうなとしか、その当時考えていなくて...」
北野氏は、旧ジャニーズ事務所をめぐる一連の性加害事案に「驚きというものはあったか」という質問に対して、芸能界に数十年身を置いている立場として、「そういうことはいろいろ噂を聞く」とした上で
「自分たちにとっては、そういう世界に行ったら、それは当然あるだろうなとしか、その当時考えていなくて...」
と説明。最近になって世界的に大問題になったのは「時代の流れかなと思う」とした。
かつては、悪いことをした子どもに対して「お前はサーカスに売っちゃうぞ」といった脅し文句があったことを紹介し、かつては「商品として人間を扱う」のが芸能界だったとした。
「奴隷ではないけれども、商品として人間を扱って、それを見世物としてお金を稼ぐという商売が芸能界だという、昔ながらの慣習というか習慣というものが残っているので、自分たちもお笑いの世界に入って、働いた10分の1ももらえない時代があった。日本の芸能界は、最近は良くなったけど、昔からひどいもんだとは思っていた」
旧ジャニーズ事務所をめぐる問題では、メディアのあり方も問題になった。この点については、
「やはりメディアと、大手のプロダクションとの癒着というのは、昔から目に余るものがあって、ひどいなあ、だからみんなタレントは大きな事務所に行って守ってもらおうとするのかなあと思うんですが...」
とみている。
映画祭に招待されていないのに「カンヌで大好評」になるカラクリ
癒着の事例として「よくあったこと」として挙げたのが、カンヌ映画祭での出来事だ。
「記者を連れて行って、カンヌ映画祭で招待もされていないのに、カンヌにある映画館で(日本映画を)上映して、日本のマスコミとか新聞では、『カンヌで大好評』って書いてあったり...。実際に行っている我々にとって、何でこんなことがまかり通るのか、なんていうことが、昔は...こく最近まで平気であったり...」
それ以外に、大手事務所を辞めたタレントの起用を避ける「お触れ」がメディアに出回ることを含めて「相変わらず日本の芸能界のダークな部分」だとした。北野氏がそういった世界で「よくぞ今までやってこられた」ことに対する「安心感」「達成感」があるとして、
「今までの日本の、そういう芸能の闇の部分はどうやって取り除いていくのか、というのは、興味は非常にある」
と話した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)