「相撲界はあいさつで始まりあいさつで終わる」
「高田川部屋が老人ホームなどの施設を訪問していましたし、後援会で年配の方に応援していただきました。それで就職のことを考えた時に恩返しと思いました。姪が介護施設に就職したこともひとつのきっかけになりました。姪から色々と仕事の内容を聞いて『こういうこともやるんだ』と。このようなことを踏まえて介護施設に就職しようと思いました」
43歳でマゲを落とし、社会人としての第1歩を踏み出した。大相撲とは別世界に飛び込んだ中世古さんはどこまでも前向きだ。
「不安はありましたけど相撲界とはまた違う世界で働けるという楽しみがありました。不安と楽しみが半々でした。ポジティブでないとまだまだ先が長いので。社会に出たら1年生ですから。社会に出てみて最初の2か月は慣れるのが大変でしたが、職場の皆さんが良い方ばかりだったので今は楽しく働かせていただいています。今までは自分のことだけを考えて練習をしていればよかったですが、今は自分のことより利用者様や同じ職場の方のことなど色々なことを考えながら仕事をしなければならいので、それが1番大変でした」
現職では大相撲時代に培った経験が生きているという。施設には大相撲が好きな利用者が多く、中世古さんが元力士だと分かると多くの利用者から声を掛けられ、しばしば相撲の話で盛り上がるという。
高田川部屋で教え込まれた礼儀作法も役立っている。
「相撲界はあいさつで始まりあいさつで終わる。そういうことも生きていると思います。礼儀作法に関しては職場でも『礼儀正しいですね』と褒められることが多い。相撲界に29年いたことが生きていると。みなさんに評価していただいているのがうれしいです。今はすごく楽しんで充実しています。2度目の新弟子はなかなか経験できませんから」