格安スマホ「シェア」「満足度」ランキングの意外な結果 1位がそれぞれ違う理由を分析

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   若い世代に支持者が多い「格安スマホ」で、利用者が一番多いのは、また、満足度が高いのはどこだろうか。

   モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2023年10月24日に発表した「2023年9月MVNOのシェア・満足度調査」によると、利用者がダントツに多い「OCNモバイルONE」が満足度ではシェア下位の「イオンモバイル」に逆転される結果が出た。いったい、なぜか。調査担当者に聞いた。

  • どこの格安スマホの満足度が高いか?(写真はイメージ)
    どこの格安スマホの満足度が高いか?(写真はイメージ)
  • (図表1)MVNOの利用率の10年間の推移(MMD研究所の作成)
    (図表1)MVNOの利用率の10年間の推移(MMD研究所の作成)
  • (図表2)利用率が高いMVNOランキング(MMD研究所の作成)
    (図表2)利用率が高いMVNOランキング(MMD研究所の作成)
  • (図表3)MVNO市場でのシェアの推移(MMD研究所の作成)
    (図表3)MVNO市場でのシェアの推移(MMD研究所の作成)
  • (図表4)MVNOの総合満足度ランキング(MMD研究所の作成)
    (図表4)MVNOの総合満足度ランキング(MMD研究所の作成)
  • どこの格安スマホの満足度が高いか?(写真はイメージ)
  • (図表1)MVNOの利用率の10年間の推移(MMD研究所の作成)
  • (図表2)利用率が高いMVNOランキング(MMD研究所の作成)
  • (図表3)MVNO市場でのシェアの推移(MMD研究所の作成)
  • (図表4)MVNOの総合満足度ランキング(MMD研究所の作成)

シェア1位「OCNモバイルONE」、満足度1位「イオンモバイル」

   MMD研究所の調査(2023年9月22日~27日)は、スマートフォンを所有している18歳~69歳の男女4万人を対象に予備調査が行われ、その後、主要な「MVNO」(格安スマホ)の6つのサービスのユーザー(150人ずつ計900人)に本調査が行われた。

   調査対象となったのは、「OCNモバイルONE」(オー・シー・エヌ・モバイルワン)、「楽天モバイル」、「mineo」(マイネオ)、「IIJmio」(アイアイジェイミオ)、「イオンモバイル」、「BIGLOBEモバイル」(ビッグローブモバイル)の6つだ。 まず、4万人のうち、通信契約しているスマホを所有している3万6331人を対象に、メインで利用している通信サービスを聞くと、格安スマホを契約している割合は9.8%となった。

   10年前の2014年調査からの利用率の推移を見ると、シェアは2014年の1.6%から2019年には13.2%まで上昇。ところが、2020年に菅義偉政権が「携帯電話料金値下げ」政策を打ち出して、大手キャリアが格安プランを打ち出した影響からか、2021年には9.3%に急落。その後、9.7%~9.9%台が続いている【図表1】。

   どの格安スマホの利用率が高いのか。格安スマホを契約している3544人にメインで利用しているサービスを聞くと、「OCNモバイルONE」(19.8%)と最も多く、次に「楽天モバイル」(14.8%)、「mineo」(12.9%)、「IIJmio」(11.4%)、「イオンモバイル」(6.7%)と続いた【図表2】。

   続いて、主要6サービスの格安スマホ市場だけに占めるシェアの推移を見ると、前回調査(2023年2月)と比べて増加したのは「OCNモバイルONE」(1.4%増)となった【図表3】。つまり、人気、シェアともに「OCNモバイルONE」の独り勝ちになっているようだ。

   一方、主要6サービスの「総合満足度」を見ると、興味深い結果が出た。1位は「イオンモバイル」(767ポイント)、2位に「IIJmio」(764ポイント)が入り、人気、シェアともにトップの「OCNモバイルONE」(759ポイント)が3位に後退したのだ【図表4】。

   実は、大手キャリアのサービスでも同じようにシェアと満足度が逆転する傾向が出ている。MMD研究所が2023年10月19日に発表した「2023年9月MNOのシェア・満足度度調査」では、シェアトップ3の「docomo」「au」「SoftBank」が、満足度ではワースト3に並ぶという結果が出ている。

「大手に負けるか」と懸命に頑張る格安スマホ

   このスマホサービス特有の現象(?)はどういう理由からか。J-CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者に話を聞いた。

――格安スマホがスマホサービス全体に占めるシェアの推移を見ると、2019年以降、2021年11月(9.3%)で底を打ち、その後、9.7%~9.9%で横ばい傾向が続いています。これは、格安スマホが伸び悩んでいるのか、それとも大手の安いサブブランド攻勢に耐えて頑張っているのか、どう見たらいいですか。

調査担当者 まず、ピーク後の2020年11月(12.3%にダウン)ですが、2020は格安スマホだった「楽天モバイル」が大手キャリアに参入し、新規受付を終了したり、KDDIが格安スマホの「UQモバイル」を吸収統合したりと、さまざまなことがあった年です。

次に、2021年11月(9.3%にダウン)ですが、2021年3月に「LINEモバイル」が新規受付を終了し、大手キャリアのオンライン専用プラン(ahamo、povo、LINEMO)が開始したことがさらに下がった要因になると思います。

しかし、2022年2月には9.9%に回復してからずっと横ばいですから、格安スマホも「大手に負けるものか」と、懸命に試行錯誤を続けている結果と考えます。

「低料金」と「容量」の二兎を追う格安スマホ

――格安スマホは、どういう頑張りの取り組みを行なっているのですか。

調査担当者 若年層は他の年代と比べて契約している容量では「無制限」や「16GB~20GB」が多く、容量を使うことが分かっています。さらに、乗り換え・プラン変更を検討している理由では「料金が高いから」がトップにきており、「安い料金」を求めています。

そんな欲張りな要求に応えるため、容量が多く、かつ料金が安いことに頑張っており、支持を得られるかと思います。最近では「NUROモバイル」が15GBで低価格の新料金プランを発表し、容量と安さを求める人に向けたものを提供しています。

――大手と戦うには、そのくらい身を削る努力をしていうわけですね。ところで、格安スマホだけの利用率とシェアの推移をみると、「OCNモバイルONE」が独走状態ですが、なぜですか。「OCNモバイルONE」のどこが魅力なのでしょうか。

調査担当者 「OCNモバイルONE」を運営するNTTレゾナントがNTTドコモに吸収合併されましたが、2021年10月にドコモが「エコノミーMVNO」を発表し、「OCNモバイルONE」がその役割を担っています。

また、2021年12月から大規模なテレビCMを展開、女優の石原さとみさんを使っていました。格安スマホがテレビCMを大々的に行うのは珍しく、このプロモーションとドコモショップでの店頭契約が、高いシェア増加に寄与したと思います。

――その「OCNモバイルONE」ですが、かつてMMD研究所が行った「大手キャリアのシェアと満足度調査」の結果同様に、シェアではトップなのに、総合満足度では逆転されていますね。これはどういうわけでしょうか。

調査担当者 シェアが高まり、新規ユーザーが増えてくると、どうしてもライトユーザーも多くなります。ユーザーの多さと、満足度は相関関係にありません。だから、シェアが多くなると、満足度が低下する傾向は避けられません。

そのうえ、MMD研究所の総合満足度は「料金」「サービス」「通信品質」「顧客サポート」の比重を聞いています。1位の「イオンモバイル」はスーパー・イオンの全国店舗を有する顧客対応、1GB刻みの分かりやすい料金プランなどが支持されており、2位の「IIJmio」は料金や端末セール価格の魅力、技術力に裏付けられた情報発信や対応力が評価されています。

「OCNモバイルONE」は、これらの4つの項目で1つも1位を取っていません。つまり、全体的にバランスよく平均点以上というわけで、突出した魅力がなかった点が総合満足度で1位になれなかったと思われます。

「格安スマホは、格安航空より頑張っています」

――格安スマホ業界の今後の展望についてどう考えていますか。どうしたら、シェア10%の壁を突破できるでしょうか。

調査担当者 これまで大手キャリアと格安スマホの差は、価格と通信品質でした。ただ、現在は通信品質の優れた大手キャリアが低価格プランを出しています。そのため、この状況を変える必要があります。

総務省も「モバイル市場競争促進プラン」で、大手キャリアによる寡占市場の問題を指摘しており、まずは総務省が、正しい競争環境を主導し、格安スマホがビジネスしやすい環境を整える責任があると思います。

また、格安スマホはメイン回線の競争だけでなく、サブ回線や法人回線など大手キャリアとの差別化を図っていくのが重要かと思います。

格安スマホだけでなく「楽天」や「ahamo」「Y!モバイル」「UQモバイル」など格安SIMでみると4割を超えるシェアとなります。航空業界に目を向けると、国土交通省の調査では、「格安航空」と呼ばれる「LCC」のシェアは約2割弱です。

格安スマホ単独では、再編もあり、10%シェアは高い壁ですが、「低価格通信サービス」と考えると、「格安航空」よりは高い水準といえるかと思います。

――なるほど。航空業界とスマホ業界を比べて、「格安航空」よりは頑張っているというあたり、「格安スマホ愛」に満ちた分析ですね。

調査担当者 はい。私は「IIJmio」を使っています。と言っても、サブ回線利用で、メインは「ドコモ」、サブに「povo」と「IIJmio」という感じです。

(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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