病院の受付の人が爪をキラキラにしていて良い気がしない――こんな患者の意見を病院が貼り出していたと、医療関係者がX(旧ツイッター)上で報告して、様々な意見が出ている。
華美じゃない方がいいと同意する声もある一方、反発の声も多いようだ。病院などがどう受け止めるのか、取材した。
「ここは病院です。オシャレは休日にして下さい」
「病院へは心と体を病んで来る所。助けをもとめて来る所」。病院に貼り出されたという2023年10月4日の「患者様からのご意見」は、こんな出だしで始まっていた。
そして、次のような要望が書かれていた。
「それを出迎える受付で爪をキラキラにして患者からの用紙を受け渡し。患者は良い気がしません。ここは病院です。オシャレは休日にして下さい」
この掲示は、三重県伊賀市内のハヤシ薬局が、店のキャラ「くすり屋の良佳さん」(@ryouka_ph)の公式Xで紹介した。投稿は、1万件ほどリポストされており、医療従事者のオシャレについて、様々な意見が寄せられている。
患者の意見について、「分からないでは無い」「オシャレも何事も『限度がある』」と理解を示す声は出た。一方で、「清潔感があれば問題ない」「ちゃんと受付業務してたら何の問題もなくね」と反発する声が出た。
ハヤシ薬局を経営する管理薬剤師の林賢治さんは9日、J-CASTニュースの取材に対し、伊賀市内の総合病院で10月4日に掲示板に貼ってあるのを見つけたと明かした。
「医療従事者のオシャレはどこまでOKなのか、ネット界隈では定期的に議論になっています。病院から、『ネイルしたら怒られた』『髪の毛を染めると言われる』と報告する人もいました。チャラチャラして派手なものはNGとされることが多いですね。臭いのある香水は、患者が気持ち悪くなる恐れがあるので、病院からは注意されます」
総合病院でも、「受付の女性が派手なマニキュア」と意見
オシャレにクレームを入れるのは、昔の価値観にとらわれた高齢者の場合が多いのではないかとみる。
「ネイルの成分が剥がれて錠剤などに入る可能性はないとは言えませんが、誤差の範囲内でしょう。むしろ、それを気にするなら、手を洗った方がいいと思います」
ただ、林さんは、今回の患者の意見にも一定の理解を示す。
「場所をわきまえて、清潔感のある恰好をするなど、見た目は大事だと思います。ネイルアートなどは、休みの日にすればいいでしょう。公衆の面前では、身だしなみはしっかりしないといけないと考えています」
同じ伊賀市内では、今回の貼り紙があった病院と同一か分からなかったが、市立上野総合市民病院も11月9日、院内の投書箱に同様なクレームが患者からあり、10月に待合室の掲示板で9月分として意見を貼り出したと取材に答えた。
それは、「受付の女性が派手なマニキュアをしています。医療従事者としてどうなのですか」といった内容だった。これに対し、病院では、次のように回答して意見とともに貼り出したとした。
「入院生活で不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません。医療従事者として、身だしなみを整えることは、患者さんに清潔な印象を与えたり、信頼関係にも関連します。身だしなみのチェックを院内で取り組んでいます」
爪のマニキュアについて、市民病院の総務課では、次のように話した。
「清潔な印象は大切なので、見つければ止めてもらう」
「受付の担当者は、患者に直接触れることはありませんが、清潔な印象は大切です。身だしなみに誤解を与えないよう、見つければ止めてもらいます。受付には、派遣で来られている方もいますので、注意喚起します。着け爪は、不潔になりますので禁止しており、休みの日に着けていても出勤時は外してもらいます」
病院の看護部と技師部では、身だしなみのマニュアルを作成しているとした。
「白髪などを染める場合も、暗い色でカラーリング見本の何番までOKと決めています。香水は、気分が悪くなったり、アレルギーがあったりする方もいますので、基本的に止めてほしいとしてあります」
患者の意見と病院の回答を院内で掲示しているのは、「おほめや不満など患者様の声を聞いて反映するのは大事です。どのように対応するか伝えて、開かれた病院にしたいと考えています」と説明した。
投書箱には、施設改善の要望など1か月で数件~数十件の意見が寄せられるといい、その一部を抜粋して「患者さまの声」として公式サイトにも載せている。しかし、オシャレについての意見は、数年に一度ほどだという。市民病院では、身だしなみに気を付けているからではないかとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)