台湾の駐日大使に相当する台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表が2023年11月8日に都内で開かれたシンポジウムで講演し、日本と台湾の連帯をさらに深めるように訴えた。
謝氏は、台湾危機を念頭に「今日のウクライナは明日の台湾」だと指摘する向きがあることについて、「ひとつの『警告』として意義がある」と指摘。民主国家が強い結束やウクライナへの強い支持を示さなかったことがロシアの侵攻を招いたとして、日本、台湾、米国といった「民主(主義)陣営」が結束を強めることで「2年前に犯した誤りを台湾で絶対繰り返してはならない」と訴えた。台湾は民主陣営の「防波堤」で、もし台湾が消滅するようなことがあれば「民主陣営の惨敗」とも指摘。「台湾の平和、台湾の安全は世界の利益」だと話した。
「台湾は民主陣営の防波堤だ」
謝氏は、中国と北朝鮮、ロシア、イランは「ひとつの軸、ひとつの集団、同盟のようなものを形成している」として、「民主主義陣営も、そのようなことをしなければ力のバランスが取れない」と主張。その上で、台湾が第1列島線に位置していることは「とても重要」だと指摘した。第1列島線とは、九州沖-沖縄-台湾-フィリピン-南シナ海を結ぶ線で、中国が勢力圏を維持し、米国の侵入を防ぐために必要だと位置づけている防衛ラインのことを指す。謝氏は、台湾防衛の意義を次のように強調した。
「中国がもし台湾を侵攻するならば、その最終的目的は決して台湾を占領することではない。その最終的な目的は、台湾を拠点として外に拡大していくことだ。だが、台湾は民主陣営の防波堤だ」 「台湾は民主陣営の砦だといえる。台湾がもし消滅させられたら、民主陣営の惨敗だ。台湾の平和、台湾の安全は世界の利益だ」
日台協力で「より効果的にアジアの自由と民主主義を守ることができる」
日台関係については
「台湾は日本にとって、もっと信頼できる友人、パートナーだ。台湾と日本が協力すれば、より効果的にアジアの自由と民主主義を守ることができると思う」
などと言及。日本としては、台湾問題を国際問題化して中国の内政問題化させないことや、一方的な武力による現状変更が許されないとする決議の採択が必要だとした。
「今日のウクライナは明日の台湾」だと指摘される機会が増えてきたことについては、「『予言』としてはあまり意義がないと思うが、ひとつの『警告』として意義がある」と説明。その意味を
「ロシアがウクライナを侵攻する前、民主国家が強い結束やウクライナへの強い支持を全然示さなかった。だからロシアは侵攻・侵略した。2年前に民主国家がウクライナでロシアの侵略を止めることができなかった。2年前に犯した誤りを台湾で絶対繰り返してはならない」
と説明した。
謝氏が講演したのは、日台の連帯を深めようと呼びかけるイベント「ONE TAIWAN シンポジウム 2023」。24年1月に行われる総統選挙に与党・民進党から出馬する頼清徳副総統もビデオメッセージを寄せ、
「台湾が国を挙げて団結する以外に、世界のすべての民主国家もまた団結して初めてこの世界的な独裁勢力の拡張に対処することができ、自由で開かれたインド太平洋地域の現状を守ることができると強く信じている。これは私がとても尊敬している安倍晋三元首相が生涯をかけて尽力されてきたことだ」
などと民主主義陣営の結束を呼びかけた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)