テレビ番組制作会社の倒産急増 旅やグルメの「ロケ番組」減少、「旧ジャニーズ」の影響は

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   テレビ番組制作会社の倒産が相次いでいる。

   2023年は過去10年間で最多に達することが、東京商工リサーチが11月6日に発表した調査「テレビ番組制作会社の倒産が高水準」でわかった。

   いったい、テレビ界に何が起こっているのか。調査担当者に聞いた。

  • コロナ禍でロケ番組が減った(写真はイメージ)
    コロナ禍でロケ番組が減った(写真はイメージ)
  • (図表)テレビ番組制作業界の倒産推移(東京商工リサーチ調べ)
    (図表)テレビ番組制作業界の倒産推移(東京商工リサーチ調べ)
  • コロナ禍でロケ番組が減った(写真はイメージ)
  • (図表)テレビ番組制作業界の倒産推移(東京商工リサーチ調べ)

社長含め従業員数人の超小さな会社ばかり

   東京商工リサーチの調査によると、2023年1~9月のテレビ番組制作会社の倒産は14件に達し、前年同期(6件)の2.3倍のペースで増加中だ。通年比較でも2014年以降の10年間で、最多だった2018年の13件をすでに超えている【図表】。

   倒産したのは、いずれも代表者を含めた従業員が数人の小規模業者ばかり。14社のうち、従業員が「5人以上9人未満」は1社だけ。残り13社はすべて「4人以下」だ。資本金別で見ても、約8割の11社(78.5%)が資本金1000万円未満だった。

   負債額も5000万円未満が12社(85.7%)を占め、最大の負債額は6800万円で、1億円に満たなかった。通常の事業会社と異なり、商品在庫を抱える必要はなく、機材コストや人件費が大半だったため、負債額が限定的になった。

   地域別でみると、14社のうち、東京都が11社、大阪府が2社、愛知県が1社で、テレビ局や関連の制作会社が集まる都市部で発生している。

   業態をみると、特に「旅番組」や「グルメ番組」「街歩き」など、比較的少人数のスタッフ、少額予算で作ることができる番組をメインに請け負う会社が目立つ。2020年のコロナ禍前から人気だった「街歩き企画」「グルメ特集」「旅行企画」を主力にしていた制作会社は、外出自粛要請の長期化により、番組は中止に追い込まれるなど、受注減少が影響したとみられる。

   また、番組制作費の減少も直撃した可能性がある。電通グループの「日本の広告費」によると、2022年のテレビの広告費は1兆8019億円(前年比2.0%減)で、10年前の2013年の1兆9023億円から約1000億円(約5.3%)減少した。テレビの広告全体に占める割合も約25%に縮小している。

   このため、テレビ局の番組制作費は減少の一途をたどり、上場する在京キー局5社(連結)の制作費は、2022年度と2017年度を比較すると、テレビ東京を除く4社で減少している。唯一、番組制作費が増加したテレビ東京も、強化コンテンツは主にアニメや配信が中心で、従来のテレビ番組制作からは大きく変容しているのが現状だ。

   こうしたことから、東京商工リサーチのリポートでは、こうコメントしている。

「テレビ局本体が中心となって制作する従来の番組に加え、海外のコンテンツサービス会社の台頭など、視聴者のニーズも多様化している。地上波だけでなく、衛星放送やネット配信番組も勢いを伸ばしており、制作会社の経営にどう影響するか注目される」

コロナで減った「旅」「グルメ」「街歩き」番組

   テレビを裏から支えてきた番組制作会社は、これからどうなるのか。J-CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した東京商工リサーチ情報本部の二木章吉(にき・あきよし)さんに話を聞いた。

――倒産したのは、本当に小さい会社ばかりですね。

二木章吉さん 社長も含めて、従業員が4人以下というところがほとんどです。しかも大半が、大きい番組制作会社やスタジオから仕事を受注する「孫請け」という形です。

仕事の形で目立つのは、バラエティーやドラマなどの制作を受け持つのではなく、「旅」や「グルメ」「街歩き」といった外に出るロケハンのスタイルです。2~3人のごく少人数で出来る内容です。

そこに、コロナが直撃しました。外出自粛要請の長期化から「旅」や「街歩き」の番組そのものがなくなったり、番組を続ける場合でも、テレビ局が外部スタッフからの感染を恐れて、自分の局のスタッフで制作を行なったりするケースもありました。仕事がどんどん減ってきたのです。

――バラエティーやドラマに切り替えることはできなかったのでしょうか。

二木さん いきなりバラエティーをやれと言っても、スタッフが数人しかいないし、番組制作会社ごとに得意分野があります。それぞれ競争が激しいから、割り込むのは難しいと思います。受注の相手先を調べると、実質1、2社というところがほとんどで、そこから仕事がもらえなくなったらピンチです。

資金繰りに行き詰まり、コロナ禍の期間中は何とかコロナ関連の給付金やゼロゼロ融資などを活用して事業を継続して、行動制限の解除まで何とか持ちこたえていましたが、旅やグルメ番組の数は、コロナ以前ほどには回復しなかったと聞きます。

コロナ禍の2021年には3件しかなかった倒産が、2023年になって急激に増えたのは、持続化給付金などの助成金もなくなり、ここに来て「息切れ」したのだと思います。

旧ジャニーズ問題が与える今後の影響は?

――ところで、「SMILE‐UP.」(旧ジャニーズ)をめぐる問題は、テレビ番組制作会社にどんな影響を与えるでしょうか。

二木さん テレビ番組制作の業界全体としては大きな問題になると思いますが、こと倒産に関しては、いま問題になっているのは業界の「風下」(かざしも)といわれる規模が非常に小さな会社です。

従業員が数人規模の会社が「SMILE‐UP.」と直接取引をするのか、あるいは所属タレントを番組に使うのか......。ちょっと考えにくいので、わからないというのが率直な答えです。

――テレビ番組制作会社の倒産は今後も増えるでしょうか。

二木さん 9月以降の10月も、複数の倒産が報告されています。テレビの広告減収と番組制作費削減が続いていますから、今後も倒産が高い水準で発生するでしょう。

みんな業界の「風下」で、現場に出てテレビ業界を支えてきた会社です。何とか、小規模経営の会社でも採算がとれる番組制作単価になる、テレビ業界全体が考えてほしいと願っています。

(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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