非正規雇用者が働きながらキャリアアップできる環境を作ろうと、リスキリングの職業訓練を受講できる事業を厚生労働省が開始することになったという2023年11月5日のNHKの報道に対し、X(旧ツイッター)で「十分にスキルがあっても非正規雇用で働かざるを得ない人もいる」「ずれている」などと批判する声が上がった。
厚労省の担当部署はJ-CASTニュースの取材に対し、「非正規雇用労働者である理由が、スキルがないからと限定して考えているわけでは全くなく、希望する方が職業訓練を受けてスキルアップすることを(キャリアアップの)ルートの1つとして考えた事業」と説明した。
「スキルがないからと限定して考えているわけでは全くない」
Xでは報道に対し
「正規に比べてスキルが低いから非正規やってるわけじゃない」
「正社員と同じ仕事やそれ以上の仕事をしている非正規がたくさんいる」
「個人のスキルの問題じゃない」
など、非正規雇用のキャリアアップ支援策としての効果を疑問視する意見が寄せられた。批判的な投稿の中には「いいね」が数千件ついたものも複数ある。
担当する厚労省人材開発統括官付訓練企画室は取材に対し、「非正規雇用労働者である理由が、スキルがないからと限定して考えているわけでは全くありません。いろいろな(非正規で働く)理由があると思いますが、希望する方が職業訓練を受けてスキルアップすることを(キャリアアップの)ルートの1つとして考えた事業」と説明。その上で「この事業でどういった手法が有効かというのを検証しようとしています」とした。
非正規雇用者のキャリアアップについては同じ会社や転職先で正社員になることだとしつつも、今回は1年間という短期の事業であるため、正規への転換割合のほか賃金水準の向上の状況や、訓練によって習得したスキルの業務への活用状況、その受講者が訓練を受けてどうだったかという主観的な評価、訓練の修了率などを成果指標にしているという。
在職者向け公的職業訓練「非正規雇用の方は対象外となっている場合が多い」
事業の趣旨については「非正規雇用の方は正規雇用や離職者と比べて能力開発の機会が少ない」という背景があるといい、次のように説明した。
「公的職業訓練は在職者向けと離職者向けとがありますが、在職者向けのものは企業経由で申し込むスタイルのため、非正規雇用の方は対象外となっている場合が多いです。離職者向けは学校のように決まった時間に通って受講しなければならず、働きながらだと受講しづらい。非正規雇用の方が働きながらでも学びやすい環境を作るためにどのような方法がよいかわからないため、公的職業訓練の研究会で検討し、試行的に実施するものです」
希望者が個人で申し込めるところが売りであるとし、「例えば受講日程を夜間だけにする、土日だけにするなど、柔軟に設定できるというのも課題にしている」という。事業の詳細は検討中という。
厚労省公式サイトの2024年度(令和6年度)予算概算要求によると、民間の教育訓練機関等への委託により、スクーリング形式とオンライン形式を組み合わせて実施。150時間程度、受講可能期間は最大9か月を想定している。訓練の結果を踏まえ、効果や課題を検証するという。