日本航空(JAL)傘下の中長距離路線を結ぶ格安航空(LCC)、ZIPAIR(ジップエア)は、イーロン・マスク氏が率いる米国の宇宙事業会社「スペースX」の人工衛星による通信サービス「Starlink」(スターリンク)を「早ければ、期待を込めて24年度中」の導入を目指す。
2023年11月8日に成田空港で開かれた新路線の発表会見後、西田真吾社長が明らかにした。通信速度は現行システムと比べて「ざっくり70倍ぐらい」で、「飛行機の中でZoom会議も余裕でできます」とアピールした。
留学やワーキングホリデーに向かう人の需要を見込む
この日の記者会見では、9番目の路線として成田-バンクーバー路線を24年3月に開設することを発表。北米路線としてはロサンゼルス、サンノゼ、サンフランシスコに次ぐ4路線目で、日本のLCCがカナダに乗り入れるのは初めて。当初は週3便だが、需要に応じて毎日運航を目指す。主に観光需要を念頭に置いており、留学やワーキングホリデーでカナダに向かう人の利用を見込む。ZIPAIRの乗客を年齢別に見ると、10代以下が13%、20代が30%、30代が24%。約7割が30代以下だ。
羽田発を含めると、バンクーバー路線にはすでに親会社のJAL含めて3社が就航している。ZIPAIRとしては、3社の半額程度の運賃を目指しており、客層が違うため競合しないとみている。
スペースXは22年10月、機内ネット接続サービス「スターリンク・アビエーション」を発表。通信速度は最大350Mbps。ウェブサイトによると、現時点では「ガルフストリーム G650」といったビジネスジェットがサービス提供の対象だ。ZIPAIRは23年1月、「アジアで初めて」の取り組みとして、スターリンク導入に向けた技術検証を行うことを発表していた。ZIPAIRは、追加料金なしで機内からネット接続できるのが売りのひとつで、「地上でできることを機内でも当たり前にできるようにしていく」というコンセプトの「具現化を目指します」としていた。
現行システムと比べると速さは「ざっくり70倍ぐらい」
西田氏によると、スターリンク導入の時期は「バンクーバーには間に合わないと思うが絶賛検証中で、多分ものになると思う。早ければ、期待を込めて24年度中にできるといい」。現行の米パナソニックアビオニクス社のシステムと比べて、「ざっくり70倍ぐらい」の速度が出るとみている。広報担当者は、「検証中」だとして具体的な速度は明らかにしなかったが、「自宅の中のWifiぐらい、下手すればそれ以上。動画もサクサク」だと説明。西田氏も「飛行機の中でZoom会議も余裕でできます」と付け加えた。
ZIPAIRは現時点で7機体制。24年1月には8機目の運航が始まり、25年度までに10機体制を目指す。飛行機とともに乗り入れる都市も増やしたい考えだが、
「まだヨーロッパやオセアニアに行くような余裕はなく、基本的にはアジアや北米を中心にネットワークを張っていく」
と説明している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)