専業主婦優遇の「3号」撤廃は、少子化対策に逆行
――「年収の壁」問題では、会社員や公務員の配偶者(主に妻)に扶養される「第3号被保険者」制度について、廃止すべきだという論議が盛んになっています。自営業者などの配偶者には認められず、不公平だという意見がありますが、どう思いますか。
中浜さん 確かに共働き世帯が増えている中で、専業主婦優遇で不平等だという批判がありますが、第3号被保険者制度を撤廃するという意見は極論だと思います。
私自身、6歳と4歳の子の母親で、3年ほど育児に専念したことがあります。子どもが小さいうちは、どうしても子育てに時間と労力がかかります。正社員としてフルタイムで働くことができず、やむを得ず配偶者の扶養に入る人もいるのではないでしょうか。そういった人たちに配慮した制度だと思っています。
欧米ではシッターやお手伝いを雇うケースが多いように思いますが、日本ではまだそのような環境も整っておらず、それらを雇える収入の確保も難しいです。
仮に、3号被保険者制度を廃止した場合、保険料負担をどうするのかも問題です。もし、収入がほとんどない専業主婦も自分たちで支払わなければならないとなると、家計への負担が増加し、子どもを持つことを諦めてしまう人もいるのではないでしょうか。少子化対策も大事な問題です。3号被保険者制度を撤廃するのであれば、育児や介護へのサポート制度も同時に拡充しなければならないと思います。
(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
中浜萌さんプロフィール
伊藤忠総研副主任研究員。
2009年に慶応義塾大学経済学部を卒業し、日本銀行に入行。統計の作成、日本国内経済(物価・市況)の調査・分析に従事。2021年に伊藤忠総研入社。担当分野は、日本の消費・物価動向、商品市況など。