38年ぶりの日本一に輝いた阪神。オリックスとの日本シリーズは4勝3敗の激闘だった。岡田彰布監督は2023年11月5日にあった第7戦終了後の優勝監督インタビューで、「プロ野球の最後の締めくくりとしては、本当いいゲームができたので、本当よかったと思います」と安堵の表情を浮かべていた。
「湯浅が抑えたことで球場の雰囲気がガラッと変わった」
スポーツ紙記者は、今回の日本シリーズのターニングポイントになった試合として、第4戦を挙げた。1勝2敗で迎えた試合は阪神が2点リードで優位に進めていたが、7回に同点に追いつかれると、8回も1死満塁のピンチに。救援した島本浩也が「代打の代打」で登場した安達了一を三ゴロに仕留めると、岡田監督が一塁ベンチを出た。交代を告げた名前は湯浅京己。故障で4カ月以上マウンドから遠ざかり、この日初めて日本シリーズにベンチ入りした右腕だった。球場がどよめきに包まれる中、湯浅は中川圭太を149キロの直球で二飛に切り抜けた。
「あんな采配をできるのは岡田監督だけです。サプライズ采配と言っていい。でも、勝算があったのでしょう。湯浅が抑えたことで球場の雰囲気がガラッと変わった。9回に大山悠輔のサヨナラ打で決着がつきましたが、阪神ファンの大声援が球場全体を飲み込んでいた。湯浅を起用した采配が与える影響力は凄い。オリックス・中嶋聡監督もベンチワークに定評がある指揮官ですが、岡田監督はずば抜けていたと思います」
65歳の監督は百戦錬磨だ。勝負師の血が騒ぐのだろう。誰もが想像しなかった用兵術で試合の流れを変え、日本一に導いた。(中町顕吾)