岸田文雄首相は2023年11月5日、フィリピンとマレーシアの訪問を終え、帰国した。下げ止まらない内閣支持率とは対照的に、現地の報道には訪問を評価するものも多く、日本の首相として初めて行ったフィリピン議会の演説は「歴史的」だと報じた新聞もあった。
岸田氏は演説の中で、中国の南シナ海進出を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の重要性を強調。これを受ける形で、現地紙は「日本はフィリピンにとって頼もしく、熱心で、安定したパートナー」といった声を伝えている。
沿岸監視レーダー供与で「フィリピンの安全保障能力の向上に寄与」
岸田氏は10月3日にフィリピンのマルコス大統領と会談し、日本が立ち上げた枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」による初の案件として、フィリピン軍に沿岸監視レーダーを供与することで合意。10月4日に議会で30分間にわたって行った演説でもこの点に触れて
「日本は引き続きフィリピンの安全保障能力の向上に寄与し、地域の平和と安定に貢献していく」
と述べた。
マニラ・ブレティン紙は、岸田氏の演説は「歴史的」なもので、岸田氏が「安全保障と防衛協力の問題に関して、日本がフィリピンにとっていかに重要なパートナーであるかを明らかにした」と表現。記事では、演説後にマーティン・ロムアルデス下院議長が
「岸田氏の発言は、国際秩序を育む上で、日本がフィリピンにとって頼もしく、熱心で、安定したパートナーであることを証明している。米国など志を同じくする国々とともに、日本との協力の青写真を固めることを楽しみにしている」
などとする声明を出したことを伝えている。
初めて日本の首相が演説することは「光栄」
マルコス氏が24年2月に来日した際、岸田氏は24年3月に政府開発援助(ODA)と民間投資を合わせて、フィリピンのインフラ整備などに6000億円の支援を行うことを表明している。同紙の別の記事では、ミゲル・ズビリ上院議長が演説後のインタビューで、この支援に触れて
「岸田氏は本当に素晴らしいメッセージを伝え、この国(フィリピン)に多くの援助を提供することを約束した」
などと述べたと報じた。ズビリ氏は、岸田氏の演説は「歴史的」で、初めて日本の首相が演説することを「光栄」とも述べたという。
デイリー・トリビューン紙は、「日本はアジアにリーダシップを示す」の見出しで、演説内容を詳報。「世界を『分裂や対立ではなく協力へと導く』決意を表明した」などと伝えた。
国営フィリピン通信社(PNA)は、岸田氏が演説でFOIPの取り組みについて言及したことに触れ、演説を聞いた議員の反応を「岸田氏、WPS保護で下院議員を鼓舞」の見出しで伝えた。WPSは「西フィリピン海」の略で、日本では「南シナ海」と呼ばれている地域だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
Members of the House of Representatives are upbeat about intensifying efforts to further protect the country’s interest in the West Philippine Sea following the speech delivered by Japanese Prime Minister Fumio Kishida. https://t.co/HmF2NiYeZb
— Philippine News Agency (@pnagovph) November 5, 2023