1000円弱は「1000円以上」?若者の「誤用」なぜ多い 専門家が指摘する「記号接地力」の弱さとAI・ネットの影響

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「あっという間に違う意味で定着するかもしれません」

   アンケートでは、70代以上の高齢者の誤用も少なくはなかったが、それはなぜか。

   深谷氏は、「少し多い」という意味の「強」の使い方は、今から500年ほど前、室町時代からあると解説。一方、「少し少ない」という意味の「弱」は比較的出現が新しいという。少なくとも明治の終わり頃の1909年、高浜虚子が「続俳諧師」の中で「月末の計算が二十円弱の損失」という文章で使用しており、「日本国語大辞典」(小学館)にも高浜虚子によるこの使用例が掲載されている。

   そのため、現在の高齢者が子どもの頃には「1000円より少し少ない」という使い方の「弱」の解釈があまり定着していなかったかもしれず、高齢者は記号接地がうまくいっていない可能性が高いと推察した。

   深谷氏は「新しい言葉は若者から生まれる」と考える。「間違った使い方だ」と指摘しがちだが、必ずしも間違いというわけではなく、新しい言葉の解釈が生まれつつあり、新しい使い方として定着していくかもしれないという。

   深谷氏が大学1年生60人ほどに聞いたところ、「1000円弱」を「1000円よりも多い金額」と答えた学生が約3割いたという。「1000円弱」を「1000円よりも少し高い」、さらに「1000円強」を「1000円よりも遥かに高い」と解釈している学生が一定数いるとした。また「1000円弱」の解釈が合っていても、「1000円強」を「1500円くらい」とする学生もいたという。

   「1000円より少し多い」とする「1000円弱」や、「1000円より遥かに多い」とする「1000円強」は、若者にとって「スタンダードになりつつあるのではないか」と指摘する。「世代間で言葉の使い方や意味が違うことはよくあります」「若い人の方が新しい言葉に敏感になって、より使おうとして、その結果、流行らせていきます」という。

   深谷氏は、この現象を「積極的な意味で捉えることができるかもしれません」とする。若者に限らず、世代を超えて使われるようになる可能性を指摘し、「若い人の方が発信力があるので、あっという間に違う意味で定着するかもしれません」と推測した。

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