「インターンシップ」2025年卒就活から激変、一部で採用選考に使用OK 専門家が指南する参加の心構え

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   「インターンシップ」と呼ばれていた就職活動中の企業での就業体験制度が、2025年卒の大学生・大学院生から名称も中身も大きく変わり、一部で企業の採用選考に利用できるようになる。

   そんななか、リクルートの就職・採用関連の研究機関「就職みらい研究所」(東京都千代田区)が2023年10月26日に発表した「2025年卒 インターンシップ・就職活動準備に関する調査」によると、9月時点で早くも約85%がプログラムに参加していることがわかった。

   新制度のもと、どう就活を進めていけばよいのか。「就職みらい研究所」の栗田貴祥所長に聞いた。

  • インターンシップ等でプレゼンの練習をする(写真はイメージ)
    インターンシップ等でプレゼンの練習をする(写真はイメージ)
  • 栗田貴祥さん(本人提供)
    栗田貴祥さん(本人提供)
  • (図表1)インターンシップ制度改正のポイント(厚生労働省公式サイトより)
    (図表1)インターンシップ制度改正のポイント(厚生労働省公式サイトより)
  • (図表2)インターンシップ等の参加割合(就職みらい研究所調べ)
    (図表2)インターンシップ等の参加割合(就職みらい研究所調べ)
  • (図表3)インターンシップ等参加プログラムの期間の割合(就職みらい研究所調べ)
    (図表3)インターンシップ等参加プログラムの期間の割合(就職みらい研究所調べ)
  • (図表4)インターンシップ等プログラム別満足度(就職みらい研究所調べ)
    (図表4)インターンシップ等プログラム別満足度(就職みらい研究所調べ)
  • インターンシップ等でプレゼンの練習をする(写真はイメージ)
  • 栗田貴祥さん(本人提供)
  • (図表1)インターンシップ制度改正のポイント(厚生労働省公式サイトより)
  • (図表2)インターンシップ等の参加割合(就職みらい研究所調べ)
  • (図表3)インターンシップ等参加プログラムの期間の割合(就職みらい研究所調べ)
  • (図表4)インターンシップ等プログラム別満足度(就職みらい研究所調べ)

インターンシップを4つに類型化

   インターンシップのあり方については、経済団体と大学関係者で構成される「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」を中心に見直しの議論が進められてきた。業務体験がまったくないものが多く、就活中の学生のキャリア形成に役立たないばかりか、混乱のもとになっていたからだ。

   産学協議会の検討の結果を踏まえ、2022年6月に文部科学省、厚生労働省、経済産業省が、「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」(三省合意)を改正し、2025年卒の就職活動から「インターンシップ」の定義を次の4つに類型化した【図表1】。

【「インターンシップ」と称さない】(取得した学生情報の採用活動への活用は不可)

(タイプ1)オープン・カンパニー:就業体験なし。個社や業界に関する情報提供・PR。実施日数は単日(半日程度)。
(タイプ2)キャリア教育:就業体験は任意。働くことの理解を深めるための教育。実施日数はプログラムによって異なる。
【「インターンシップ」と称して実施】(取得した学生情報は、3月以降は広報活動に、6月以降は採用選考活動に使用可)

(タイプ3)汎用的能力・専門活用型インターンシップ:就業体験必須。学生にとっては自らの能力を見極め、企業にとっては学生の評価材料を取得。実施日数は汎用的能力が5日間以上、専門活用型が2週間以上。実施期間の半分以上を就業体験に充当。
(タイプ4)高度専門型インターンシップ:就業体験必須。修士課程・博士課程の大学院生が対象。学生にとっては実践力の向上、企業にとっては学生の価値材料の取得。実施日数はジョブ型研究が2か月以上。

   このように企業・業界紹介のものから、キャリア形成に力点を置いたものまで4つに類型化されることになった。学生にとっては、インターンシップがどこまで採用選考の参考にされるかがあいまいで、不安と混乱のもとだったが、「タイプ1」「タイプ2」は禁じられる一方、「タイプ3」「タイプ4」は採用選考の基準にもなると、明確に線引きされることになった。

就職後の数年後、数十年後のキャリアモデルを知りたい

   就職みらい研究所の調査(2023年9月20日~25日)は、2025年3月卒業予定の就職活動中の大学生831人と大学院生305人が回答。まず、「タイプ1」から「タイプ4」までのプログラムに参加したかどうかを聞くと、9月時点で応募したのは88.0%、実際に参加したのは85.2%だった【図表2】。参加した企業の平均数は約6社(5.94社)だ。

   参加件数全体のプログラム期間の割合は「半日」と「1日」で85.1%を占めた。大半の学生が「タイプ1」と「タイプ2」を選んでいるわけだ【図表3】。2日以上のプログラムに参加しなかった理由については、「学業の都合で予定が合わなかった」が50.8%で最も高い結果となった。

   ただ、プログラム参加後の満足度を聞くと、「満足している」と答えたのが「1日以下」は46.4%だったのに対し、「5日以上」は73.4%と、日数が多いほど満足度が高い【図表4】。

   学生のプログラムに対する期待や不安のコメントをみると、こんな声が寄せられた。

「実際の社風や現場で働いている方々のお話を聞きたいです。また、職場の動画などあれば嬉しいです」(大学院生・理系女性)

「自分の能力を見極め、仕事内容が自身の望みと合致しているか確かめたい」(大学生・文系男性)

「自己分析などではあまり実感することができないような、自分の強みや長所を見つけられること」(大学生・文系男性)

「就職した後の数年後、数十年後のキャリアモデルを知りたい」(大学生・理系男性」

「ネットやパンフレットなどでは分からないような情報や、実際に働いている方と話す機会、就活のアドバイスをいただきたいです」(大学生・文系女性)

「インターンシップにたくさん参加しても、業界を絞ったり、やりたいことを見つけたりすることができておらず、これからどのようにインターンシップの参加経験を活かせばよいのかわからない」(大学生・文系女性)

「インターンシップで悪い印象を残すと、本選考で容赦なく落とされそうな点」(大学生・文系男性)

「授業との折り合いがつかず、参加できなかった分不利になってしまうのではないかという焦り」(大学生・文系女性)

目的使い分けて参加を

   J-CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった「就職みらい研究所」の栗田貴祥所長に話を聞いた。

――今年(2023年)9月時点で、プログラムに応募した学生が88.0%、参加した学生が85.2%という数字をどう見ますか。例年より早いでしょうか、遅いでしょうか。

栗田貴祥さん まず、最初にお伝えしたいのは、2022年6月にいわゆる「3省合意」が改正され、今年(2025年卒の就活)から、インターンシップをはじめとしたキャリア形成支援にかかわる取り組みが4つに類型化されました。本調査では、この4つの類型の調査を行っております。

したがって、昨年(2024年卒)までの「インターンシップ」の定義が異なるため、過去数字との比較ができないのですが、応募学生88.0%、参加学生が85.2%という数字は、年々上がってきている印象を持っています。

これは、先輩から、インターンシップへの参加は、進路選択をする際の検討に役立つなどとアドバイスを受けて、2025年卒の学生たちが意欲的に応募・参加した結果なのではないかと感じています。

――もう、すでにプログラム参加の平均社数が約6社(5.94社)になっていますね。今後の長い就職活動を通じて、どのくらいの数の会社を体験していくとよいと考えていますか。

栗田さん どれくらいの企業のプログラムに参加すればよいのかというのは、学生の皆さんの状況や参加することで何を得たいかにもよるので、人それぞれに目安となる社数は異なってくると思います。

大学の講義や部活、アルバイトなど、それぞれのスケジュールを鑑みながら、納得できる1社に出会うために、どんなプログラムに、どれくらい参加していくといいのか、ぜひ、ご自身で考えていただき、行動してみてください。

――参加したプログラム期間の割合が「1日以下」が85.1%で、「2日以上」が15%弱です。この数字をどう見ますか。できれば、もっと長い期間のプログラムに参加したほうがいいのでしょうか。

栗田さん そもそも、プログラムを実施する企業も、長期のプログラムを開催するのには負担がかかりますので、開催されているプログラム自体、短期間のものがかなり多かったことによる結果の表れでもあるかなと思います。

学生の皆さんは、短期開催のものであれば、より多くの業界や企業について広く知ることができますし、長期開催のものであれば、実際にその企業や仕事が、自分にマッチしているかどうかなど、深く知ることができます。ご自身の状況に応じ、うまく目的を使い分けて参加することが重要かと思います。

インターンシップで採用されているのは3割弱

――しかし、学生のコメントを見ると、「学業の都合で予定が合わなかった」という声が半数以上に達します。学業を犠牲にしても、しっかりと日数をかけて参加しないと不安だという学生が多いようです。企業側にもっと工夫の余地がある問題でしょうか。

栗田さん 確かに、2日以上のプログラムに参加できなかった理由としては、「学業の都合で予定が合わなかった」という声が多くなっています。ただ、学生の本分は学業ですから、学業を犠牲にしてまで、キャリア形成支援プログラムに参加しないといけないということはありません。

限りある学生生活において、学業や部活、アルバイトなど、悔いの残らないようしっかりと打ち込むことはとても重要です。

2023年卒の企業への調査では、採用数に占める自社インターンシップの参加者は27%のみという結果となっています。つまり、全体採用数の約7割強が、インターンシップ以外のルートから、採用されていることになります。学生の皆さんには、学業に励んでいただきながら、参加可能なスケジュールで開催されるプログラムの参加を検討していただきたいと思います。

また、企業側の皆さんには、学生の学業に影響を与えないスケジュールでの開催や、実施期間を複数設定するなどの工夫をしていただき、学生が参加しやすい開催を検討いただきたいと思います。

――学生のコメントを見ると、「社員の生の声を聞きたい」「自分の能力を見極めたい」「職種への適性がわからない」といった悩みが多く聞かれます。こうした声を踏まえ、どういう心構えでプログラムに参加し、何に一番注目してその会社を見て、また、自分自身をどう見直していけばよいでしょうか。

栗田さん まずは、プログラムに参加する自分なりの目的を明確にして参加することが大切です。自分の軸がまだ明確になっていないという人でも、自分が好きなこと、興味があること、得意だと思うことなどから、仮の軸をいったん置いてみて、本当に自分の軸になりうるかどうかを確認してみることを目的にしてもよいと思います。

頭の中で、グルグル考えを巡らしていても、本当に自分にマッチするかどうかはなかなかわかりません。まずは、仮置きしてみた軸で、実際に目で見て、耳で聞いて、肌で感じたことから、本当に自分に合っている仕事なのか、職場なのかを確かめてみてください。

いろいろ体感する中で、どんどん仮軸をチューニングしていければ、本当に自分が大事にしたい軸が見えてくると思います。

「人は、よりよく生きるために働くのです」

――まず、自分の中で「軸」をつくることが大切なわけですね。ところで、新しい「インターンシップ」制度では、一部で「採用選考活動に使用可」となりました。実際には、それ以外のプログラムも採用選考に使われる可能性がないとはいえません。そうしたことを踏まえて、今後の参加スケジュールでは、何に気をつけたらよいでしょうか。

栗田さん 2025年卒から4つの類型に分かれた「インターンシップ等のキャリア形成支援プログラム」のうち、「インターンシップ」に該当するプログラムで取得した学生の情報を、企業は、卒業年次前年(2024年)の3月以降は広報活動に、6月以降は採用選考活動に活用が可能になりました。

ただ、企業によっては、独自のスケジュールで選考などを行っているところもあります。気になる業界、気になる企業などがあるのであれば、個別にスケジュールがどうなっているのか、主体的に情報をとりにいき、それに応じたアクションをとっていくことが重要です。

世の中には学生の皆さんの想像以上に、多くの仕事、多くの職場があります。積極的に就活に向き合うことで、皆さん一人ひとりが納得できる1社に出会えることを願っています。

――これから就活に頑張る学生に、特に強調しておきたいアドバイスがありますか。

栗田さん 人は働くために生きているのではなく、よりよく生きるために働くのだと思います。自分らしい人生を歩むために、本当にこの仕事、この職場は、自分の強みが生かされる仕事なのか、飾らずに、自分らしく居られる場所なのか、それを見極める絶好の機会として、インターンシップ等キャリア形成支援プログラムを有効に活用していただければと思います。

(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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