「帝国の慰安婦」著者、有罪判決破棄に「左も右も誤読した」 慰安婦問題が「解決しない」根本原因も指摘

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   慰安婦問題を取り上げた書籍「帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い」で元慰安婦の名誉を傷つけたとして、著者の朴裕河(パク・ユハ)・世宗大名誉教授が名誉毀損(きそん)の罪に問われている問題で、韓国の大法院(最高裁)は2023年10月26日、名誉毀損を認めた控訴審判決を「無罪の趣旨」で破棄し、差し戻した。

   これを受け、朴氏は10月30日付けの韓国紙、朝鮮日報に「左も右も『帝国の慰安婦』を誤読した」と題して寄稿。一連の訴訟は、慰安婦ではなく、支援団体をはじめとした「周辺の人々」との戦いだったと指摘した。

  • 韓国の大法院(最高裁)の決定を受けて報道陣の取材に応じる朴裕河(パク・ユハ)・世宗大名誉教授。「帝国の慰安婦」をめぐり、名誉毀損の罪に問われていた(写真:AP/アフロ)
    韓国の大法院(最高裁)の決定を受けて報道陣の取材に応じる朴裕河(パク・ユハ)・世宗大名誉教授。「帝国の慰安婦」をめぐり、名誉毀損の罪に問われていた(写真:AP/アフロ)
  • 韓国の大法院(最高裁)の決定を受けて報道陣の取材に応じる朴裕河(パク・ユハ)・世宗大名誉教授。「帝国の慰安婦」をめぐり、名誉毀損の罪に問われていた(写真:AP/アフロ)

控訴審では逆転有罪判決が出ていた

   書籍は13年に韓国で出版。検察は書籍内の記述35か所が名誉毀損にあたるとして朴氏を在宅起訴。1審では検察が問題視した表現の大半は元慰安婦の名誉を傷つける意図はなかったとして無罪判決を言い渡した。だが、控訴審では一転、1審の無罪判決を破棄して罰金1000万ウォン(約100万円)の支払いを命じる有罪判決を言い渡した。これを受けて、検察と朴氏の双方が上告していた。

   一連の訴訟では、例えば

「朝鮮人の日本軍慰安婦たちは、仕事の内容が兵士を相手にする売春であることを認知した状態で生活のために本人の選択に応じて、慰安婦になって、経済的対価を受けて売春をする売春業に従事した人である」

といった記述が問題視された。

   寄稿では、大法院の判断では「私の執筆動機と文章の意図が明確に把握されており、学問と歴史に対する深い考察も含まれている」として「嬉しく、ありがたかった」と評価。

   続けて、著書を執筆した理由に言及。慰安婦問題をめぐる日韓の対立が激化する中で、

「声の大きな両極端の争いに動員され、同じように声を上げる人だけが増えていく消耗的な現実にブレーキをかけたいと思った」

と説明した。元慰安婦の女性が実は孤独な状況に置かれていたとも指摘した。

「ハルモニ(おばあさん)の人生をありのままに見ようとする人はほとんどいなかった。大切にされているように見えて、実際は疎外されており、慰安婦問題が解決しない原因はそこにあると私は思った」

出版後も「彼女らは、まだ疎外されていた」

   書籍出版後にハルモニに会った際も、「彼女らは、まだ疎外されていた」という。

「『敵は100万人、私は一人』『(支援団体)挺対協(現・正義連=日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)を除いて直接補償してほしい』というハルモニたちの吐露を聞き、私はこれまでの疑問と判断が正しいという確信を得た」

   そんな中で左右の双方に「誤読」が起き、左派から朴氏への攻撃につながったとみている。

「両極端を批判した私の本をめぐって、両極端は自分たちの既存の主張に合わせて誤読した。右派の一部は私が自分たちと同じように『慰安婦は売春婦』と同意したと歓迎し、左派の一部も慰安婦を売春婦と非難したと私を攻撃した」

   その上で、

「今回の事件は、慰安婦のハルモニと私の戦いではなく、周辺の人々と私の戦いだった」

とした。

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