コーヒーの供給が危機に陥るかもしれない「コーヒー2050年問題」を、ご存じだろうか。地球温暖化を含む気候変動が、中南米のコーヒー農園に従来と異なる気候をもたらし、コーヒー豆の品質が落ちて、病害・害虫により生産量も低下。2050年には、コーヒーの2大品種のひとつ「アラビカ種」の栽培地域が半減してしまうという予測だ。
こうした未来の危機に対して、コーヒー豆の販売会社やカフェ業界はどのように考えているか、取材した。
輸入先トップ5は「コーヒーベルト」の国
「コーヒー2050年問題」を、もう少し詳しく見てみよう。コーヒーの栽培に適した北緯25度から南緯25度の「コーヒーベルト」で温暖化などの環境変化が続くと、2050年には全世界で消費されているアラビカ種の栽培地が現在の50%にまで減少する可能性がある。これは、研究機関のワールドコーヒーリサーチ(WCR)が指摘している。
図1は、2050年の気候変動のシミュレーションだ。着色部分がコーヒーの栽培に適した地域だが、2050年には「気温の上昇」や「湿度の上昇」、「降雨量の減少」などが原因で減っていることを示している。
また図2は、全日本コーヒー協会が発表したコーヒー生豆輸入量の国別のグラフ。2023年は1位ブラジル(7万5629トン)、2位ベトナム(7万4277トン)、3位コロンビア(2万3549トン)、4位グアテマラ(1万5594トン)、5位タンザニア(1万1435トン)で、いずれも北緯25度から南緯25度までのコーヒーベルトに位置する国だとわかる。WCRの指摘を踏まえると、このまま輸入先を変更しない場合、日本国内のコーヒー供給量は激減し、コーヒーが高級な嗜好品になってしまう可能性が考えられる。
持続可能な調達に取り組む
J-CASTニュースBiz編集部は、缶コーヒー「BOSS」シリーズを販売するサントリー食品インターナショナル(本社・東京)を取材した。すると、コーヒー豆の高騰はもう始まっていると広報は答えた。
サントリーグループでは現在、持続可能な調達をするため、「サステナブル調達」に取り組んでいる。コーヒー豆生産者が低賃金になる傾向を指摘しながら、長時間労働の削減や、生活賃金を保証。調達における持続可能性を原材料サプライヤー、製造委託先、物流協力会社に周知し、人権リスクの高い原料があると確認した場合、購買活動を見直し、リスクの軽減に努めているとした。
キーコーヒー(本社・東京)は、2022年にコーヒー豆のメーカー出荷額を引き上げた。これ自体は、コーヒー生産国の気候変動が直接影響しているとは言い切れないとの話だ。一方で理由について、「2022年5月末よりコーヒーの最大生産国ブラジルでの霜害懸念に対して、コーヒー相場に投機筋が参入し、コーヒー生豆相場が高騰した背景があります」と、取材に回答した。つまりコーヒーの供給には、相場の影響も強くはたらく。2050年を迎えるまで、こうした事態が再発しないとも限らない。
なお同社は2050年問題への対策について、WCRの「コーヒーの品種改良で世界を救う」との事業目的に賛同し、その活動に積極的に参加していると説明。また、コーヒーの産地であるインドネシアの直営農園の一角を試験圃場として提供し、WCRの実施する活動やIMLVT(多地域品種実証試験) など、気候変動に適応するコーヒーの品種開発にも協力しているという。