「ひどく怒られる」「毎日が苦痛」医薬品卸で働く若手が悲鳴 「薬不足」出口見えず対応に追われる

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   製薬会社と医療機関をつなぐ「医薬品卸」において、働く若手社員の離職数が増加しており、新規採用も減少している――。医薬・化粧品関連産業の労働組合の協議体「ヘルスケア産業プラットフォーム」が実施した調査から、こんな実態が浮かび上がった。

   過去1年間に退職を検討したことのある回答者からは、「メーカーさんの代わりにひどく怒られる」「お得意様には謝り続け、会社からは理想ばかりを押し付けられ」など、空前の「薬不足」の中で板ばさみに遭いながら、助けを得られず苦しむ声があがっている。

  • 空前の「薬不足」が起きている
    空前の「薬不足」が起きている
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緻密な在庫管理と謝罪の日々

   このアンケートが取り上げられたのは、2023年9月20日に開催された厚生労働省の中央社会保険医療協議会・薬価専門部会の「意見陳述」の場だ。

   「薬不足」のきっかけは、2020年12月に一部の製薬会社においてジェネリック医薬品の品質不正が多発し、業務停止命令などが下されたことだ。他の製薬会社に流れた注文は製造能力を超え、出荷調整を行わざるを得なくなった。

   日本製薬団体連合会の調査によると、限定出荷または供給停止が発生しているジェネリック医薬品の品目数は、2022年8月時点で41.0%に達し、2023年9月時点でも32.2%に及ぶ。医薬品卸会社は医療機関からの注文に応えるため、医薬品の調達に奔走している。

   しかし出口の見えない出荷調整対応で、医薬品卸の現場で働く担当者の心身の負担は限界に近づいているようだ。ヘルスケア産業プラットフォームが2740人から回答を得たアンケートには、過去1年間に退職を検討した人から悲鳴のような声が寄せられている。

   20代男性営業職は「後発品の品切れが多すぎる状態がもう3年以上続いているにもかかわらず、一向に改善が見られず仕事に対するモチベーションが保てなくなってきている」と嘆く。

   20代女性営業職は「出荷調整による緻密な在庫管理、毎日の謝罪、メーカーさんの代わりにひどく怒られることも多々あります。本来の営業の仕事ができていなく、精神的な疲労や労力と給料が合っていないと強く感じます」と、いら立ちを見せる。

   コールセンターに所属する30代女性事務職は「お得意様には謝り続け、会社からは理想ばかりを押し付けられ、かといってサポートやフォローはなく改善も見られません。苦しいと訴えても寄り添う振りをされるばかりで毎日が苦痛で何も楽しくないです。人としての価値や存在意義が軽視されていると常に感じています」と明かす。この状態で仕事を続けることは難しいだろう。

過去5年間の新卒採用「減少」76%、離職者数「増加」64%

   同じ調査で日本医薬品卸売業連合会の会員企業45社の人事部から得た回答によると、過去5年間に新卒採用における応募者人数が「増加傾向にある」と答えた会社はゼロ。「減少傾向にある」が34社(76%)にのぼった。

   一方、過去5年間の若年層人材の離職者数が「減少傾向にある」と答えた会社は、わずか1社(3%)。「増加傾向にある」と答えた会社は29社(64%)を占めた。

   「出荷調整」による業務負担増が若年層人材の離職に「あまり影響していない」と答えた会社は4社(9%)にとどまり、「大いに影響している」が27社(60%)にのぼっている。

   医薬品卸を取り巻く問題は「出荷調整」だけではない。物価の高騰に加え、いわゆる「2024年問題」でトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制がかけられ、人材調達の問題が深刻だ。

   さらには国全体の医療費削減の要請もあり、「薬価改定」によって薬の単価は6年連続で引き下げられている。コスト増加を価格転嫁しにくい仕組みの中で、納入価格を上回る流通コストが生じ、多くが流通不採算品となっているという。

   2022年度の医薬品卸の営業利益率は平均0.8%と低い。大手上場企業でも、メディパルホールディングスが1.5%、アルフレッサ ホールディングスが1.1%、スズケンが1.4%(いずれも2023年3月期)と低水準で、昇給の余地はない。

   前出のアンケートでも、20代男性営業職が「医薬品業界自体、将来性がないように感じることが多い」と答えている。

   日本医薬品卸売業連合会は薬価専門部会において、2024年度の薬価改定に向けて「薬価20円未満の医薬品および安定確保すべき医薬品の薬価引上げを検討していただきたい」と意見を述べている。

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