AIの進化で「コンタクトセンター」の仕事は消えるか 人をゼロにする努力より早道なのは

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   「AIでなくなる仕事」として最近注目されているのが、顧客等からの問い合わせに対応するコンタクトセンター業務だ。お困りごとを聞き取り適切な回答を返すプロセスは、意外にもChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)に向いている。

   一方で、人間でなければ対応できない領域もあり、AIがそれをサポートする形に進化していくので「人の仕事自体がなくなることはない」という見方もある。今後、コンタクトセンターはどうなっていくのだろうか。

  • 今後、コンタクトセンターはどうなっていく?
    今後、コンタクトセンターはどうなっていく?
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「チャットボット」「ボイスボット」で進む自動化・省力化

   コンタクトセンターとは、顧客や消費者の対応を電話やメールなどさまざまな手段で行う窓口のこと。AIはすでに、この業務の一部を担っている。

   たとえば、「チャットボット」。テキストで寄せられた問い合わせ内容を自動で分類し、回答を返すロボットだ。あらかじめ「よくある質問と答え」を分類しておけば、番号などを選択するだけで必要な情報にたどりつける。

   顧客や見込み客にとっても、人と話すわずらわしさがないし、24時間対応してもらえる便利さもある。待ち時間も短くなり、必要な情報や手続きへのリンクを送ってもらえれば最終的な目的も達成しやすくなる。

   音声ベースでやりとりを行う「ボイスボット」もある。住所や電話番号を口頭で伝えると、AIがテキスト化し、文字で返信したり音声で復唱したりすることで行き違いを減らすことも可能だ。話し方はかなり自然で、機械相手に話しているストレスはほとんどない。

   会話のやりとりを自動的にテキスト保存すれば、「問い合わせ内容」の報告を作成する必要がなくなる。記録が正確かつ容易になり、検証やデータ活用もやりやすくなる。このような省力化は業務の効率化でもあるが、気づかないうちに「AIに仕事の一部が奪われている」と見ることもできる。

   楽天コミュニケーションズが今年6月、全国のコンタクトセンターの責任者やスーパーバイザーを対象に実施した調査によると、自社で「AIを活用している」と答えた人は、501席以上のコンタクトセンターで64.9%にのぼり、「活用に向けて準備中」の29.8%を加えると約95%を占める。

   具体的な活用状況・予定は「AIチャットボットによる応対の自動化・省力化」(66.8%)、「AI-IVR(自動音声応答システム)による応対の自動化・省力化」(50.7%)が上位に。「通話内容書き起こしによる応対履歴登録の自動化・省力化」(34.6%)をあげる人も多かった。

「オペレータ支援」へのAI利用を目指す海外企業

   AIは、人間の業務を確実に侵食している。人による設定は必要だが、ハイパフォーマーな人間の知識やプロセスを教え込むことで、「並の人間よりいい仕事をする」人工知能を作ることもできる。

   一方、海外企業では日本企業と異なるAIの使い方をしているようだ。デロイトトーマツグループが2023年8月に発表した調査結果によると、コンタクトセンターのAI導入に関する「重点領域」は、チャットボットなどの「セルフサービスの拡大」と「コンタクトセンターのインフラ刷新」が上位である点は、日本も海外も共通している。

   しかし、海外企業では3位(11%)だった「オペレータ支援機能の導入」は、日本では8位(2%)と低い。この理由について、調査元のデロイトトーマツグループの住川誠史パートナーは次のようにコメントしている。

「(日本企業のコンタクトセンターは)海外企業と比べて『オペレータ=人』への投資に渋りが見られる。サービス品質を現場で支えているのはオペレータであり、従業員体験(EX)の向上が顧客体験(CX)向上につながる好循環を生み出すべく、人の代替でなく人の力を最大化するテクノロジーへの投資を強化すべき」

   AIに完全な回答をさせ、人をゼロにする努力をするより、AIで人を効率的・効果的にサポートして業務の質や量を高める方が現実的だし早道である。AIとどのような付き合い方とするか、今後日本企業で問われていくのかもしれない。

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