日銀の政策修正、慎重にタイミング見計らう
――人生には何があるかわからないから、想定外の事態になった時の心構えをしておけ、ということですね。
ところで、現在の低金利状態は、日本銀行が大規模金融緩和政策を続けているからですが、今後、日銀が政策修正に踏み切れば、金利が上昇して住宅ローンの金利が上がることを心配する人が多いです。日銀の政策修正はいつ頃になると思いますか。
小林さん 来年(2024年)の賃上げの状況を見通せてからというのが多くのエコノミストの見方だと思いますが、正直、分からないというのが本音です。
植田和男日銀総裁は、デフレからの脱却を掲げて、政策修正の条件に「賃金上昇の持続性が確認でき、かつ、2%の物価目標が達成できること」をあげています。しかし、仮に来年以降、それが見通せて、日銀が利上げに踏み切ったとして、その頃に米国ではインフレのピークアウトが鮮明になって、逆に景気減速にでも転じていれば、中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が利下げを開始するかもしれません。
これまではFRBが利上げして日銀は金融緩和を維持したために日米金利差が広がり円安となり、インフレ圧力が強まっていたわけですが、それが逆転すれば急激な円高になり、トヨタ自動車など日本経済の根幹をなす輸出産業は大打撃を受けるかもしれません。
デフレ脱却どころか、経済が悪化して元も子もなくなるリスクもゼロではないでしょう。日本銀行はデフレ脱却を重視して利上げを遅らせてインフレを加速するリスクと、早すぎる利上げでデフレに逆戻りするという、上下双方向にぶれるリスクがある中で、バランスを見極めながら、慎重にタイミングを見計らっていると思います。