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AIタレントに仕事奪われる? 伊藤園CMで議論沸騰も...サービス提供会社が「全くそんなことはない」と語る理由

   大手飲料メーカーの伊藤園が人工知能(AI)で生成した「AIタレント」をテレビCMに起用し、SNSで「リアルすぎる」「AIに仕事が奪われる」などと話題になっている。同社の発表によれば、AIタレントが出演したテレビCMは日本初だ。

   今後もAIタレントを起用するテレビCMは増えるのか。サービスを提供したAI model(東京都渋谷区)の担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、既に複数の会社が起用を検討しているとし、今後も増えていくだろうと推測する。

  • 伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」テレビCM(PR TIMESより)
    伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」テレビCM(PR TIMESより)
  • 伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」テレビCM(PR TIMESより)
  • AI model社による制作(同社提供)
  • AI model社による制作(同社提供)
  • AI model社による制作(同社提供)
  • AI model社による制作(同社提供)
  • AI model社による制作(同社提供)

テレビCMにAIタレントを起用するメリット

   話題になったのは、伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」のCMだ。AIタレントの女性は、年齢とともに見た目が若返り、笑顔やスキップなどの動きをみせる。SNSでは、仕事に対するAIの影響を危惧する声や、映像のクオリティの高さに驚く声などが上がった。

   AIタレントを作成したのは、AI model社だ。AIで生成したオリジナルモデルをアパレルや広告向けに提供するサービスを中心に手掛けている。例えば、生成したモデルに実際の商品を着用させるサービスなどを展開している。

   AI modelの担当者は2023年10月19日、テレビCMにAIタレントを起用するメリットについて、(1)クリエイティブ表現の幅が広がる(2)ローコストになる――の2点が主にあると取材に答えた。

   具体的には、性別や年齢、見た目などの要素を自由に変えられるバリエーションの幅広さがある。担当者は「様々な人種のモデルや、下は5歳から上は80歳まで、幅広い年齢層のAIタレントを、クライアントのご要望に応じて提案することが出来ます」と話す。

   また、テレビCMでタレントを使う場合とAIタレントを使う場合、「一概には言えないが、一般的にはある程度の金額差があると思います」とも明かす。コスト的な観点から「AIに仕事が奪われる」と危惧する声もあるが、「全くそんなことはない」と否定する。

「CMなどの広告はタレントのライフスタイルやイメージに基づいてクリエイティブに作るという基本があるので、AIが仕事を完全に奪うというより、クリエイティブの発想を広げたり、そもそも予算的にタレントを呼べなかったりするときに、AIタレントを補完的に使っていくようなものだと思っています」

   今後AIタレントを起用するテレビCMは増えるのか。担当者は「増えると思います」と推測し、(1)アニメキャラクターやVTuberのようにAIタレントも起用される(2)実際に撮影するとコストがかかる表現をAIタレントで実現させる――という方向で進んでいくのではないかと見解を示した。

「似ていると指摘されるリスクはゼロとは言えない」

   生成AIには、著作権侵害などの問題を指摘されるケースがある。テレビCM以外に屋外広告などの広告にもAIで携わっている同社は、独自のシステムを使った生成AIを開発した上でAIタレントを制作しており、実在の人物などに類似する可能性を減らす対策も講じている。

「弁護士に法的な見解書をいただいて、弊社のサービスは全く問題ないという証明をもらっています。その上で、誰かに似ている可能性もあるため、最終的な納品物に対し、類似性をチェックするシステムなどを使って、ダブルチェックで確認しています」

   しかし類似性のチェックをしても、SNSなどで指摘される可能性は残る。同社は取引先に「似せていなくても似ていると指摘されるリスクはゼロとは言えない」と説明し、それでも指摘された場合、倫理的な観点から改めてAIタレントを作り直すという方法も提案しているという。

   また、広告表示に関する「優良誤認」や「誇大広告」にも注意を払っている。担当者によれば、例えば「髪」に関する広告では、実際の人物の髪で表現する必要がある。同社では、AIタレントを使ってはいけないジャンルに関しては使わないようにしている。

   テレビCMにおけるAIタレントの起用について、担当者は「テレビCMは多くの人の目に触れるという意味では、ある意味でリスクも存在する表現だと思っていて、そのリスクをきちんと踏まえた上でAIタレントをどう捉えるかだと思います」と述べた上で、以下のような考えを示した。

「制作会社や広告代理店、クライアント、AI会社を含め、制作の意図や生成する人物、手法に対する認識を統一し、きちんと制作していることを共有できていれば、仮に『似ている』と指摘された場合も倫理的な観点も踏まえて正しい対応ができるかと思います」