「時給16元」は決して低くない
ただ、ユニクロの店舗仕事がきついという話は以前からよく聞かれ「ユニクロ=辛者庫」という例えもネット上でよく見かける。辛者庫とは清朝の宮廷ドラマで罪を犯した人が送られる、雑用を一手に引き受ける部署だ。
筆者の知り合いも「大学時代に日本文化を学びたくてユニクロでバイトを始めたが、煩雑すぎて最初の給料をもらってギブアップした」と自らの経験を語った。ある中国人大学生は「先輩が就職して店長になったが、仕事が大変すぎて100キロあった体重が1年で60キロに減った」と本当か冗談か分からない話を教えてくれた。
バイトの時給16元というのは、中国の相場では決して低いわけではない。ファストリは今年3月に日本の社員の給与も一気に引き上げており、今回中国で正社員、非正社員問わず給与を大幅昇給したのは、国内ユニクロ事業に次いで二番目に大きい中国ユニクロ事業の成長を加速するためだろう。中国は空前の就職難で、これまで人材を大量に受け入れて来たIT産業や不動産産業が低迷しており、この機により優秀な人材を獲得する狙いもありそうだ。
【筆者プロフィール】 浦上早苗:経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。新聞記者、中国に国費博士留学、中国での大学教員を経て現職。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。