「週休3日制」でも給料は同じ 「賃上げ」できない会社の最終兵器に?

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   岸田文雄首相は2023年10月18日、日本労働組合総連合会(連合)の芳野友子会長と首相官邸で会談。吉野会長は「来年の春闘でも賃上げで成果を出さなければ」と述べ、岸田首相も「継続した賃上げが必要」と応じたと報じられている。

   しかし企業の中には、コストの価格転嫁がままならない中で、固定費が膨らむことは避けたいと考えているところもあるだろう。そんな中、給与水準はそのままに「週休3日制」の導入を始めている会社があるようだ。

  • 「週休3日制」は広まるか?
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水土日の「週休3日制」に完全移行する伊予鉄グループ

   松山市の伊予鉄グループは、毎週土日に加え、水曜日を休日にする「週休3日制」を導入し、この10月から完全移行した。ねらいは「従業員のさらなるモチベーションアップ」による「生産性向上」と「自律的人材育成」だ。

   週平均40時間のフレックスタイム制で労働時間は維持され、給与水準も変わらないが、年間休日は170日を超えることになる。「賃上げ」なしで従業員の生産性が上がれば、会社としては安上がりになると計算したのか。

   会社はあわせてオフィスデザインを一新し、ペーパーレス化を加速。人工知能のChatGPTのさらなる業務への活用を進めるという。直近3年で82%にまで増えた男性の育児休暇取得率も100%を目指す。

   同様の取り組みは、都内の大手企業でも進んでいる。ある信販会社は一般事務職を「週休3日制」で採用している。1日の所定労働時間は8時間半で、通常勤務の「週休2日制」の7時間半よりも1時間長いが、週単位の労働時間は34時間で、3.5時間短くなる。

   普段から月20時間程度の残業をしている人にとって、1時間は「労働時間が長くなった」という意識にすらならないレベルだろう。求人応募の必須要件は社会人経験2年以上、予定年収は360万円から460万円。休日はシフト制だが、週休3日でこの年収なら満足という人もいるのではないか。

人事院が国家公務員の「週休3日制」導入を勧告

   なお、大手信販会社の場合、「週休3日制」は人材獲得競争が厳しい一部の職種だけで特別に募集を行っている。人手不足の中、少しでも働く環境の魅力を打ち出して、差別化を図りたいねらいがあるようだ。

   「週に2日も会社を休むなんて」――。そんな昭和の企業戦士の嘆きも、遠い昔だ。土曜日午前中の「半ドン」勤務が一般的だった時代に、銀行が1989年に導入すると、1990年前後に他の企業へとも「週休2日制」が急速に広がっていった。

   それから30年あまり。パソコンやインターネット、スマートフォンの業務への活用で、生産性は格段に上がったはずだ。しかし、依然として労働時間は変わらず、平日の昼間のほぼすべてを会社に捧げ、代わりに人生を会社に丸抱えしてもらう思想は変わっていない。

   一方で、今年8月には人事院が、2025年4月から国家公務員の「週休3日制」を導入するよう、内閣と国会に勧告。変化はじわじわと起こりつつある。

   なお、これまでの日本の「週休3日制」は、労働日数が5日から4日に減るのに合わせ、給与も20%減らす場合が多かった。しかし「失われた30年」で給与が上がらないうえ、昨今の物価高を考えれば、給与を変えずに休日を減らし、実質的な大幅賃上げを図ってもいいくらいなのかもしれない。

   実際、外資系など一部の企業では、「生産性100%維持」を前提に、給与を維持しながら週休2日を3日に増やしたところもあるという。月の労働時間が短縮されれば、実質的な賃上げとなる。

導入のボトルネックは「部署間の不公平感」

   ただし、新しい制度の導入によって、摩擦が生じる場合もあるようだ。ある商社に勤めるAさんによると、職場で「週休3日制」が採用されたものの、総務や経理などの管理部門は休みにくく、週休2日制のまま。企画やエンジニアなど「労働時間と成果が比例しない」とされる業務との不公平が生じていると不満を募らせている。

「同じ会社で同じ給料なのに、いつの間にか一部の人たちだけ週休3日になって、私たちは取り残されてしまった。トップに不公平だと文句を言ったけど、『あなたたちの部署も休めるしくみを作りなさい』と突っぱねられてしまった」

   伊予鉄グループの場合も、「週休3日制」の対象となるのは本体の44人だけ。伊予鉄道や伊予鉄バスなどのグループ会社で働く1100人以上の社員は対象外で、当面は休日を約8%増やしたり、週休3日を選択可能とする新たなシフト勤務者枠を新設したりするという。

   少子高齢化で生産年齢人口が急速に減少し、採用競争も激化する中で「勤務日数の短縮なんてとんでもない」「むしろ逆に残業を増やしてもらわなければ仕事が回らない」と嘆く経営者もいるだろう。

   しかし、人工知能の実用化で工場の無人化などの省力化が進み、「AIに仕事を奪われる人」は今後間違いなく増えていく。そんな世界にソフトランディングする意味でも、いまから「週休3日制」への取り組みを検討しておくことは、会社にとって不可欠ではないか。

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