スマートフォン料金の値下げ競争が一段落した今、携帯大手のサービスプラン利用者が一番多いのは、また、満足度が高いのはどこだろうか。
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2023年10月19日に発表した「2023年9月MNOのシェア・満足度調査」によると、シェアトップ3の「docomo」「au」「SoftBank」が、満足度ではワースト3に並ぶという「謎の結果」が出た。いったいどういうことか、調査担当者に聞いた。
MMD研究所の調査(2023年9月22日~27日)は、スマートフォンを所有している18歳~69歳の男女4万人を対象に予備調査が行われ、その後、各プランのユーザー(300人ずつ計2700人)に本調査が行われた。
調査対象となったサービスプランは、携帯電話大手4社の「docomo」(NTTドコモ)、「au」(KDDI)、「SoftBank」(ソフトバンク)、「Rakuten最強プラン」(楽天モバイル)と、オンライン専用プランおよびサブブランドの「ahamo」(NTTドコモ)、「povo」(KDDI)、「UQ mobile」(同)、「LINEMO」(ソフトバンク)、「Y!mobile」(同)の9つだ。
まず、通信契約しているスマホを所有している3万6331人を対象に、メインで利用している通信サービスを聞くと、「docomo」(28.9%)、「ahamo」(5.8%)、「au」(16.3%)、「SoftBank」(10.7%)、「Y!mobile」(10.0%)、「UQ mobile」(7.9%)、「Rakuten最強プラン」(7.4%)、「povo」(2.2%)、「LINEMO」(1.2%)、そして「格安スマホ」(MVNO、9.8%)という結果になった【図表1】。
大手4社の9つのサービスプランを約9割(90.2%)のユーザーを利用しているわけだ。
9つのサービスをメインで利用している3万2787人を母数にして、各サービスのシェア(利用率)を調べると、1位「docomo」(32.0%)、2位「au」(18.0%)、3位「SoftBank」(11.9%)、4位「Y!mobile」(11.0%)、5位「UQ mobile」(8.8%)、6位「Rakuten最強プラン」(8.2%)、7位「ahamo」(6.4%)、8位「povo」(2.4%)、9位「LINEMO」(1.3%)という結果になった【図表2】。
ところが、予備調査から9つのサービスを利用している2700人(各300人ずつ)を抽出して「総合満足度」を聞くと、順位が大きく変わったのだ。
「満足度」を、「料金部門」(安さ、プランの分かりやすさ、お得さ)、「サービス部門」(提供端末やオプションプランなどの豊富さ)、「通信品質部門」(データ通信速度、つながりやすさ)、「顧客サポート部門」(情報の豊富さ、サポート対応の良さ)の4部門で聞き、合計ポイント(1000満点)で「総合満足度」をランキングする仕組みだ。
すると、意外な結果が出た。満足度1位にシェア7位の「ahamo」(736点)が、2位にシェア9位の「LINEMO」(735点)が、そして3位にシェア8位の「povo」(730点)が入った。一方、満足度7位にシェア2位の「au」(651点)が、8位にシェア1位の「docomo」(647点)が、そして9位にシェア2位の「SoftBank」(637点)が入った【図表3】。
つまり、シェアの上位3つが、満足度では下位3つに並ぶ逆転劇の結果になったわけだ。これはどういうわけだろうか。
J-CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったMMD研究所の担当者の話を聞いた。
――シェアトップ3の「docomo」「au」「SoftBank」が、総合満足度ではワースト3になっていますね。逆にシェアワースト3の「ahamo」「povo」「LINEMO」が満足度ではトップ3になりました。
今年2月にMMD研究所が行なった同様の調査「2023年2月MNOのシェア・満足度調査」でも全く同じ傾向が出ましたから、偶然とは思えません。これは、いったいどういうことなのでしょうか。
担当者 総合満足度のランキングを決める方法として、アンケート時に「料金」「サービス」「通信品質」「顧客サポート」の比重を聞いており、それに沿って点数を算出しています。
その際に利用者が満足度を評価する比重は、毎回「料金」の比率が一番高いのです。だから、結果的に「docomo」「au」「SoftBank」の3つのプランは、ほかの6つに比べて料金が高いため、ワースト3となってしまいます。
近く新しい料金調査を発表しますが、参考までに昨年の料金調査データを【図表4】にまとめました。これを見ると、「docomo」「au」「SoftBank」の3つのプランの月額平均利用料金は9526円です。一方、「ahamo」「povo」「LINEMO」は月額平均利用料金が5072円~6478円ですから、やはり安さが大きな魅力となり、満足度がかなり高くなります。
――そもそも、シェアと満足度の順番が一致しないというか、まるっきり逆転する傾向は、食品業界や自動車業界などでは聞いたことがありません。なぜ、携帯電話業界にだけこういう傾向がみられるのでしょうか。
担当者 シェアの話となると、「docomo」「au」「SoftBank」の3キャリアユーザーはもともとボリュームがありました。それ以外は、2020年9月に菅義偉内閣がスタートして、携帯電話料金値下げを打ち出してからできたサービスが大半です。
歴史が浅いため、満足度とシェアは相関関係にはありません。大手3キャリアは引き続きシェアに占める割合が大きい結果となっています。ただ、シェアの伸び率は新しいユーザーを獲得できていることになるため、満足度と相関しています。
【図表2】で、1年半前の2022年2月からのシェアの伸び率が高いプランをみると、総合満足度トップ3の「ahamo」(プラス1.5%)、「povo」(プラス0.4%)「LINEMO」(プラス0.4%)と、小さいシェア割合ながらも着実にユーザーの心をつかんで伸びていることがわかります。
逆に、総合満足度ワースト3の「SoftBank」(マイナス1.2%)、「docomo」(マイナス1.5%)、「au」(マイナス3.5%)と、満足度が低いため確実にシェアを減らしています。
――10月23日、楽天モバイルが悲願だった「つながる電波」であるプラチナバンドを獲得することが発表されました。
これで、「Rakuten最強プラン」もやっと大手3キャリアに対抗できそうですが、鳴り物入りだった「Rakuten最強プラン」が、シェアではずっと横ばい状態(8.4%~8.2%)が続いています。何か理由があるのでしょうか。
担当者 「NTTドコモ」「KDDI(au)」「ソフトバンク」「楽天モバイル」という大手4社の大枠で見ると、以前からシェアの比率が変わらないため、横ばいになっています。
楽天モバイルに理由があるというより、ほかの3社「NTTドコモ」「KDDI(Au)」「ソフトバンク」のサービスプランの変動を細かく見た際に、たとえば、「docomo」から「ahamo」に、「au」から「povo」にと、同じ系列内で安いプランに乗り換えしているユーザーが多い結果ではないかと考えられます。
――となると、「Rakuten最強プラン」も安心はできませんね。
担当者 今後に注目したいと思います。
(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)