全日空(ANA)が成田-ホノルル線に導入した超大型旅客機、エアバスA380型機の3号機が2023年10月20日夜、成田空港からホノルルに向けて出発した。
3号機は21年10月16日、製造元のエアバス社の工場がある仏トゥールーズから成田空港に到着。コロナ禍による需要減で、この2年間は整備のための試験飛行だけで、一般の乗客を乗せて飛ぶのは今回が初めてだ。ANAはA380を3機保有。かつては「お荷物」だと指摘する声も出たが、需要回復を受けて全3機の稼働にこぎ着けた。
1、2号機は2年3か月も定期便が途絶える
ANAのA380には「空飛ぶウミガメ」の意味を持つ「FLYING HONU」(フライングホヌ)という愛称がついている。1号機が19年3月、2号機が同5月に成田空港に到着。ハワイへの足として就航したが、ほどなくしてコロナ禍に突入。20年3月下旬にホノルルから成田に戻った便を最後に定期便としては運休が続いた。定期便としての運航が再開されたのは、それから2年3か月が経った22年7月1日のことだった。この間の飛行機の維持が負担になっているとの見方もあり、この日の井上慎一社長に対する取材では、記者からA380が「お荷物」だった可能性を指摘する、次のような質問も出た。
「この2年間、なかなか国際線を戻せないという中で、ある種『お荷物』的になっていたのではないか」
井上氏は、
「機材が飛ばないということで、お荷物と思ったことはございませんで、それを活用できない会社が悪い、そういうスタンス」
だと反論。A380が飛べない間は、レストランとして地上で機内食を提供したり、国内線で遊覧飛行をしたりしてきた。井上氏によると、その結果として「ANAファン、ハワイのファンのみなさんとのエンゲージメントをホヌがつないでくれた」。その上で「思いがつながった2年半」だったとして、
「『お荷物』とは思っておりません!大事な大事な飛行機でございます」
と強調。この時点では、3号機就航のタイミングは需要動向を見極めて判断する考えを示していた。
日本からのハワイ訪問客は「コロナ前」4割にとどまるが...
ハワイを訪れる観光客数は回復途上だ。ハワイ州産業経済開発観光局(DBEDT)の統計によると、23年8月に日本からハワイを訪れた人は6万4155人。22年8月の3万1151人からは倍増したが、「コロナ前」の19年8月(16万728人)と比べると39.9%の水準にとどまっている。ただ、ANAの岡功士・成田空港支店長によると、年末年始のホノルル線の予約状況は「現段階でもコロナ前の9割程度」で、「需要はある程度戻ってきている」としている。
急激に進んだ円安は逆風だが、必ずしも現地で財布のヒモが固くなっているわけでもないようだ。日本人観光客1人あたりの1日の消費額を見ると、23年8月は231ドル(約3万4600円)。22年8月は240ドル(約3万6000円)、19年8月は228ドル(約3万4200円)と、コロナ禍の前後で大きな変動はみられない。
この日の成田空港第1ターミナルには、A380の1号機~3号機が一堂に会し、搭乗ゲートでは「ホヌ」のキャラクターが乗客を見送った。1号機はハワイの「空」を連想させる、ANAのイメージカラーでもある濃いブルー、2号機はハワイの「海」をイメージしたエメラルドグリーンが特徴。3号機はハワイの「夕陽」をイメージしたサンセットオレンジで彩られている。
A380には乗客520人が乗れる。2階席(アッパーデッキ)には、ファーストクラス8席、ビジネスクラス56席、プレミアムエコノミー73席を配置。1階席(メインデッキ)にはエコノミークラス383席がある。3号機にとっての初便となるNH182便には、乗客320人が搭乗。そのうち座席を使用したのは乳児8人を除く312人で、搭乗率は60.0%だった。クラス別の内訳はファーストクラス8人、ビジネスクラス53人、プレミアムエコノミー58人、エコノミークラス193人だった。21時24分頃、ホノルルに向けて出発した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)