スキャンダルから立ち直った吉本興業
――災い転じて福となす。いい話ですね。
前島さん ほかにも、同じエンタメ業界の雄である吉本興業も、かつて芸人と暴力団との癒着などのスキャンダルが相次ぎ、メディアから批判されました。しかし、見事に立ち直り、現在の危機管理は素晴らしいものです。特に、芸人の反社会勢力との付き合い方に対する研修は徹底していると聞いています。 吉本興業のウェブサイトをみると、「向う側にひとがいる。笑ってくれるひとがいる」という会社の理念がしっかり書かれています。特に、企業は「社会の公器」であるという点を強く打ち出していることは「サステナビリティ」の項目をみるとわかります。「笑いを心のインフラに」として、吉本が目指すもののトップに「健康と福祉」を掲げています。 お年寄りに笑いで元気になってもらおうと、「よしもとお笑い介護レクリレション」という動画サービスを介護施設に提供しているのです。また、次世代育成のために、社員の子育て支援、女性活躍にも本気で取り組んでいます。
――正直、吉本興業がそういったことに力を入れていることは知りませんでした。
前島さん 不祥事を起こした企業がたどる運命は2つです。破滅への道を突き進むか、それとも、不祥事をバネに大改革を進めてこれまで以上に躍進するかです。雪印グループは前者で、その後も不祥事を起こし続けて廃業し、雪印メグミルクになりました。 後者の代表には、ほかにも焼きそばの「ペヤング」のまるか食品(群馬県伊勢崎市)があります。2014年12月、「ペヤングソースやきそば」にゴキブリが混入していたと、SNSで発信されたのです。まるか食品の対応は見事でした。工場を一時停止して、「そういう事実はない」と言えば済むものを、「虫が入る余地はあり得る」と発表して、設備全体を見直すと広告を打ったのです。 そして、全工場の生産を半年間ストップさせて、徹底的に調べ上げました。その間、全国の大好きな焼きそばを食べられなくなった「ペヤングファン」が応援し、新しいファンまで増えました。(後編に続く)
(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
前島裕美さん
(株式会社)日本能率協会総合研究所組織・人材戦略研究部主任研究員、経営倫理士 お茶の水女子大学大学院修了、2002年同研究所入社。調査研究・コンサルタントとして、約20年にわたり多くの企業のコンプライアンス対策、ダイバーシティーマネジメント、経営改革などを支援。