「この人の、この技術を得たい」ため社員にした
――すると、日本企業はイスラエルの優秀なハイテク技術を求めて集まっているわけですか。
飯島さん そのとおりです。2015年1月、同じく日本のハイテク立国化を目指していた安倍晋三首相(当時)がイスラエルを訪問、情報通信技術分野を中心に経済連携協定と投資協定を結びました。
そして、政府が主導するかたちで企業にイスラエルへの進出を要請し、現地のベンチャー企業への投資を勧めたのです。
だから、多くの分野の企業が現地に進出していますが、工場を建てるわけではなく、多くが研究開発の拠点や、投資が基本です。IT関連企業のほかに金融・保険業が多いのも投資が目的です。
――進出企業の4割以上を製造業が占めていますが、それも投資が中心ですか。
飯島さん はい。投資の方法はさまざまです。メーカーが現地にベンチャーファンドの子会社を作り、スタートアップ企業に投資したり、M&A(企業の合併や買収)をしたりして、吸収した技術を国内の生産に生かしています。
――イスラエルとハマスの軍事衝突が激化したら、日本企業や日本経済にどんな影響があるでしょうか。
飯島さん イスラエルでは、すでに30万人の予備役招集が始まっていると伝えられています。当面の心配は、日本企業で働くイスラエル人社員が軍に召集されることです。
彼らは単なる現地従業員ではありません。「この人の、この技術を得たい」ために、投資やM&Aを通じて社員にした貴重な人材ですから、進出した日本企業にとっては大きな痛手です。
中長期的には原油高騰が心配です。ただ、日本経済全体からみると、原油問題を除けば影響は軽微といえるでしょう。イスラエルが日本に輸出するものは「技術」が中心ですから、たとえば、台湾から半導体部品の輸出が途絶えると、日本の自動車産業全体がストップしてしまうといった事態とは大違いです。
もっとも、日本のオレンジ果汁の1割はイスラエル産ですから、飲料関係には影響が出るかもしれません。
(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)