「技を盗め」は時代遅れ?後進育成めぐり議論 「経験の言語化は意外と難しい」の声も

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   専門技術が求められる職業で、よく「技を盗め」という言葉を耳にします。熟練者が新人に対して、懇切丁寧にノウハウを伝えるのではなく、己の技術を側で見せ続けることによって、長い時間をかけて習熟していくことを期待する文脈で使われます。

   X(Twitter)では、この「技を盗め」というスタンスの教育手法についての投稿がたびたび議論を呼びます。ツイートまとめサービスのTogetter(トゥギャッター)が解説する「3分くらいで分かる週刊X(Twitter)トレンド【J-CAST出張版】」、今回は「技を盗め」について掘り下げます。

  • 画像はイメージ
    画像はイメージ
  • 画像はイメージ

「技を盗め」は「教える理論を持ってない」のと同じ?

   料理人や職人、技術職など、「技を盗め」という教育手法を採用している業界は多岐に渡ります。高度な専門技術を後世に伝えていくための伝統的な手法として評価する声がある一方で、疑問を唱える声もあります。

   海運業界で働くXユーザーが「海運業界から『技は盗めおじさん』を淘汰したい」という主旨の投稿をし、大きな反響を呼びました。

   そのユーザーは、新人に対して「技を盗め」と主張する同業者のことを「一見職人気質でカッコよく見えるが、教える理論を持ってないから教えないのだ」とバッサリ。その上で「素晴らしい技術や経験は大衆化すべきであり、大衆化するためには皆が分かる理論がないといけない」と主張しています。

ちょっと毒を吐くけど"技は盗め"という人を淘汰したい「素晴らしい技術や経験は大衆化せんといかん。大衆化するためにはみんなが分かる理論がないといかん。」 - Togetter

   投稿を見た他のユーザーからは「背中を見て学べはもう古いし、そんなこと言ってる場合じゃない」「時間をかけないと覚えられない技術もあるが、ある一定程度のラインまでは効率よく論理的に指導すればいけるのでは?」といった肯定的な反応だけでなく、「マニュアル化できる人を置かない組織側に問題があるのでは」「教える人にもメリットが生まれる仕組みを作る必要がある」といった冷静な意見も出ました。

とはいえ「言葉で教えようのない技術」もある

   「技を盗め」についての話題から派生して、「とはいえ、言葉で教えようのない技術・領域も存在する」というポイントも議論の種になります。

   きっかけとなったのは、婿入りの形で鍛冶師を継ぐことになった人が、義父に「鉄の焼き入れの温度」について尋ねたところ、義父から「自分は焼けた鉄の色を見て1℃単位で温度を見分けられるから口では教えようがない」と言われたという話。実際にサーモグラフィーを使って確かめると、義父が本当に1℃単位で鉄の状態を見分けていたことが分かったそうです。

   この話を皮切りに、「指物職人の父がものの寸法を見ただけで判断できた」「自分は若い頃印刷物のインクの各色のバランスを1%単位で言い当てることができた」といった、専門職の人による、言葉では伝えがたい技術の実例が続々と寄せられる展開に。

「技は見て盗め」が良くないのは分かるが、言葉では教えようのない領域は存在する - Togetter

   一連の投稿について「では鍛冶職人もサーモグラフィーを導入すればいいのでは」という意見や、「経験を言語化するのは意外と難しいんだよな。試しに自分が当たり前にできることを言語化してみたらいい」という反応など、さまざまな視点の意見が交わされています。

   また、「100まで教えられないのはわかる。 だが100教えられないからと教える量を0にしないでほしい」「言葉にするのは難しくても伝えるための方法を模索しなければならない」といった声もありました。

異例の早さで大会優勝した布団職人の例

   「技を盗め」というアプローチを用いなかったことで、後進育成の大きな成果を生んだ実例もあります。

   ある布団職人が先代の父親から決して「目で盗め」と言われることなく、最初から丁寧に技術を伝えられた結果、布団づくりの大会で業界としては異例の早さで優勝を果たした、という逸話がXで拡散されました。

   こちらは、名古屋市にある「丹羽ふとん店」の5代目の丹羽拓也氏のお話。丹羽氏は、とある経営者インタビューでも、先代から受けた手ほどきを振り返って「技術の基盤を身に着けるまでは、『盗め』という方針よりも『細かく教える』方針の方がよいと思います」と語っています。

布団作りの職人さんが息子さんに「目で盗め」とは言わず最初から技術を丁寧に教えた結果→技術はしっかり伝えた方がいいと思った→様々な意見 - Togetter

   この話を受けて、Xユーザーからは「職人の仕事の到達点は何十年もかけて身につけた技を次の世代に短時間で継承することにある」「伝承法も進化してるということですな」といった反応が。一方で、手取り足取り教わったものの、実を結ばなかったという実体験とともに「教えられる側の熱意・気質も大事では」とする指摘もありました。

   Xで取り上げられる「技を盗め」に関する話題を見ると、技術の継承や教育の在り方として疑問を唱える反応は少なくありません。一方で、単純に「時代遅れ」「非効率」といった言葉で切り捨てることも難しい領域であることが分かります。

   言葉で伝えにくい技術の存在を認めつつも、それらの技術をどのような手段で伝承していけばよいのか。引き続き議論が盛り上がりそうです。

   以上、Togetterがお送りする「3分くらいで分かる週刊X(Twitter)トレンド【J-CAST出張版】」でした。今回紹介したTogetterまとめを振り返りたい方はこちらからどうぞ。次回もお楽しみに。

【まとめ一覧】

ちょっと毒を吐くけど"技は盗め"という人を淘汰したい「素晴らしい技術や経験は大衆化せんといかん。大衆化するためにはみんなが分かる理論がないといかん。」 - Togetter

「技は見て盗め」が良くないのは分かるが、言葉では教えようのない領域は存在する - Togetter

布団作りの職人さんが息子さんに「目で盗め」とは言わず最初から技術を丁寧に教えた結果→技術はしっかり伝えた方がいいと思った→様々な意見 - Togetter

姉妹サイト