男性育休、4割が「取得したくない」で話題も... 専門家「実際は大きく改善している」

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   人材サービス大手のパソナグループが発表した「仕事と育児・家事・介護に関する意識調査」で、男性の約4割が育休を「特に取得したいと思わない」と回答し、SNS上で話題となった。この結果について専門家は「実際には育休取得状況は数年前と比べて大きく改善している」とした。

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  • 年齢別のデータを追加した育児休業に関するアンケート結果(パソナグループ提供)
    年齢別のデータを追加した育児休業に関するアンケート結果(パソナグループ提供)
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男性の育休取得者は急速に増えている

   パソナグループが2023年9月26日に発表した調査は、全国の15歳以上の男女1049人が対象で、性別・年代それぞれが均等になるよう調査したとしている。「あなたが育児休業を取得する場合、どれぐらいの期間の取得を希望しますか」との設問で、男性は「特に取得したいと思わない」が38.9%で最多だった。女性は「1年以上」の37.4%が最多となった。年齢別の結果は公式サイトに掲載されていない。

   「育休後コンサルタント」として育児をしながら働く人や組織の支援活動をしている山口理栄さんは、J-CASTニュースの取材に対し「かつて育休が取れなかった時代の人や育休を取る必要のない人の意見も含まれている可能性がありますので、このデータのみではなんとも言えません。しかし実際には、男性の育休取得率は急速に変化していて、ほんの数年前と比べても取得状況は大きく改善しています」とした。

   山口さんは厚生労働省が発表する「雇用均等基本調査」でも、男性の育休取得の改善が示されているとした。

「1996年は0.12%、2020年は12.65%、2022年はさらに5ポイント上がって17.3%になっています。私は年間100回くらい(企業に対して)研修をしますが、(男性の育休は)どんどん取りやすくなっていますし、取っているという変化を肌で感じています」

   さらに、マイナビが2024年卒の就活予定者を対象として実施した調査を見ると、若年層の意識にも変化が表れていることがわかるという。

「『育児休業を取って子育てしたい』と回答した人は、15年卒の調査では40.5%だったところ、24年卒では61.3%と、この約10年間で男子は20ポイント、育休を取って子育てしたい人が増えています」

   また「育児休業を取って子育てしたい」と答えた人の男女差について、15年卒は28.7ポイントあったが、24年卒では1.9ポイントまで減っていることに触れ、「もはや男女の差がなくなるところまできています」とした。

   2022年4月に育児・介護休業法が改正され、事業主に対し、本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た労働者への育児休業制度等に関する個別周知が義務付けられた。そのため、山口さんは、これらの数字は今後さらに改善が予想されるとした。

「意識高い系」パパでなくても育休を取る時代に

「(育休を)最初から取るものだと思って取ったという人もすごく増えています。今から10年ほど前、イクメンがブームになった2010年頃は、ものすごく意識の高いお父さんが、ものすごく準備をして理論武装をして、『自分が育休を取っても大丈夫です』とアピールして育休を取得していました。それでも当時は、パピートラック(編集部注;育休明けの職場での冷遇)になったり、いじめのような感じでキャリアを失った人もいました。

でも今は、意識の高いパパではなくて、普通の人が自然に育休を取っています。上司に『もっと長く取れば?』と言われている人もいるくらいで、とても大きな変化が起きています。このあいだ研修に出てくれた管理職は、『9年前、自分は育休を取りたかったのに、子どもができても夜11時まで帰れなかった。子どもの顔を見たくても、そんなの無理に決まっているだろうと言われた。妻には散々文句を言われてきた』ということを話していました。ほんの9年前でもそんな感じでした。そんな会社でも、今はお父さんに育休を取らせたくて研修をするような、前向きな会社になっています」

   その上で、「特に取得したいと思わない」と回答した人に予想される背景について、次のように見解を述べた。

「育休を取りたいのに取れないのだとしたら、それはまだ企業側が寛容ではない、もしくは前例がないから無理だと思ってしまっている当事者の人もいるかもしれません。女性の育休が取れるようになった約30年前も、制度はあるのに取得しない人がたくさんいました。制度ができてすぐに使うというのは勇気がいるわけです。なので、(同じような事情で)本当は取りたかったけど無理だろうと思っている男性が回答しているのかも知れません」

50代以上も約半数は「育休を取得したい」結果に

   J-CASTニュースがパソナグループから年齢別のデータを取り寄せたところ、「特に取得したいと思わない」と回答した男性の年代は、15~29歳、30~39歳、40~49歳がいずれも34%未満だったのに対し、50~59歳が51.1%、60~69歳が46.0%、70~84歳が44.8%だった。

   50代以上に「特に取得したいと思わない」人が集中していたものの、裏を返せば50代以上の男性も約半数は「育休を取得したい」と思っているという結果だが、以前より理解や意識が高まった結果と言えるのか。山口さんは「以前は(育休取得が)許されなかったが、今はそれが許される時代になったことを認識した」のではという。

「以前より理解や意識が高まっている、というよりは、男性の育休が許容される社会に変わってきたことを感じていて、現代社会ならとりたいと思っている、というほうが当たっているかと思います。

以前から、お父さんも育児をしたいという自然な気持ちがあり、それは時代によってなんの変わりもないと私は思っています。父は昭和2年(1927年)生まれでしたが、私が生まれたとき、夕方職場(自転車で行ける距離)から帰ってきて、風呂に入れてくれて、そのあと職場に戻ったそうです。ただ、日本では高度経済時代に国・社会から、男は仕事、と思い込まされていて、それが長く続き、育休制度ができてもそれを自分が取ることなど選択肢に上がってこなかったのです。

いまは、外にでれば平日は当たり前のようにお父さんが子どもを保育園に連れていく光景を目にします。休みの日も街中や行楽地で、お母さんは手ぶら、お父さんがベビーカーを持ち、かつ子供を抱っこしていたりします。レストランでも、乳幼児にお母さんでなくお父さんがご飯を食べさせていたりします。

上の世代の人はそれをみて、または自分の子供(息子や、娘のパートナー)が孫の育児をするのを見て、時代は変わった、今のほうがいいな、と感じているのではないでしょうか」

   パソナグループの執行役員で女性活躍推進担当の長畑久美子さんもこの結果について次のようにコメントした。

「『取得したいと思わない』という回答が注目されがちですが、逆の側面から見れば、家庭の状況等によりもともと育休を取得する必要がない人も一定数いることを考えると、男性でもかなりの割合の方が、期間の差はあれ『取得したい」と回答していることは、一昔前に比べると社会的に大きな進歩であると言えます。

『取得したいと思わない』という回答をゼロにすることが大切なのではなく、本心では取得したい人が、社会の意識(アンコンシャスバイアス:無意識の思い込みも含む)や企業風土など様々な事情で『取得を躊躇してしまう』ような社会を変えていくことが必要ではないでしょうか」
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