産経新聞グループの調査会社、産経リサーチ&データが2023年9月29日に発表した「ビールに関するアンケート」によると、ビールと聞いて思い浮かぶメーカー・ブランドは「キリンビール」が824票でトップになり、次いで「アサヒビール」は662票となった。
ところが、である。年代・性別で分けた場合、40代以下で認知度が高いのは「アサヒビール」、50代以上の認知度が高いのは「キリンビール」と分かれるかたちとなったのだ。
これはいったい、なぜ? アサヒグループジャパンのマーケティング担当者、キリンホールディングスの広報担当者にそれぞれ話を聞いた。
若い世代はアサヒが突出
今回の調査は2147人の全国の男女に、「あなたは『ビール』と聞いて、どこのメーカー・ブランド名を思い浮かべましたか。真っ先に思い付いたビールメーカー・ブランド名を1つ教えてください」と質問した。(図1、図2)
その結果、男性では、20代以下で「75.0%」が「アサヒビール」と回答しており、突出している。つづいて、「アサヒビール」と答えた30代男性は「34.5%」、40代男性は「33.6%」となった。20代から40代でトップとなったかたちだ(なお、30代は「アサヒビール」と「キリンビール」は同率)。
一方で、50代以上の男性ではどうかといえば、50代の「38.9%」が「キリンビール」と回答した。つづいて、「キリンビール」と答えた60代は「37.9%」、70代は「33.5%」、80代以上では「51.0%」という結果になった。
女性では、どうか――。20代以下女性で「アサヒビール」と答えたのは「41.2%」。つづいて、30代女性は「44.3%」、40代女性は「35.2%」とそれぞれでトップとなった。
これに対して、50代以上の女性では、50代では「キリンビール」が「47.2%」、60代では「41.7%」、70代女性では「45.8%」、80代以上では「58.3%」となった。
つまり、男性70代をのぞけば、傾向としては男性も女性も、40代以下は「アサヒビール」、50代以上は「キリンビール」の認知度が高いようだ。
アサヒは「スーパードライ」のフルリニューアルで心つかんだ?
どうして、世代間で認知度が違うのだろうか――。J-CASTニュースBiz編集部は、キリンビールとアサヒビールを取材した。
まずは、アサヒグループジャパン(東京都墨田区)。若い世代への認知度の高さについて、マーケティング担当者は、
「若い20代、30代に認知されているのは、発売以来ロングセラーの『スーパードライ』のデザインや味を2022年にフルリニューアルしたことがあるのではないでしょうか。また、当社の『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』の『ジョッキのように泡があふれる缶ビール』がインパクトの大きな商品だったのではないでしょうか」
と分析する。
さらに、さまざまな世代へのアピールとして、「ラグビーワールドカップの協賛として携わるなど、全世代の消費者に向けたコミュニケーションを行っている」(同担当者)ことも強みのようだ。
ちなみに、2023年10月11日発売の「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」は、アルコール度数を3.5%に抑えた新商品。新たな需要の創出をねらう。
「おいしさ」に向き合い続けてきたキリン
キリンホールディングス(東京都中野区)にも話を聞いた。シニア世代への認知度が高かったことについて、広報担当者は「キリンビールが大切にする本質価値である『おいしさ』に向き合い続けてきていることに、お客様も気づいていただけている結果ではないでしょうか」と話す。
もっとも、「おいしさ」に向き合い続けるべく、若い世代に向けた取り組みにも力を入れているという。
「取り組みを強化している『SPRING VALLEY』などで、クラフトビールの新たなおいしさや楽しみ方をみなさんに提案しています。特に、2023年10月10日発売の『一番搾り やわらか仕立て』では、ビールのライトユーザーがビールへの向き合い方を変えてもらうことを目的として販売する商品。新商品などを通じてビールと距離のある方々にも、手に取っていただける機会をこれからもつくっていきたい」(広報担当者)
なお、産経リサーチ&データの「ビールに関するアンケート」は2023年9月20日~26日、産経リサーチ&データのアンケートサイト「くらするーむ」の会員を活用したインターネット調査を行い、2147人の有効回答を集めた。