育休で養った「家オペ力」が、仕事でも役立つ
――企業の「新人教育」みたいなものですか。ところで、フリーコメントには、「会社の体制を変えないと変わらない」と危惧を抱く声が散見されます。デメリットの2位が「夫のキャリアダウンにつながる」です。
川上さん とても重要な指摘だと思います。そもそも、有休が柔軟に取れるような職場環境であれば、生まれたばかりの下の子をママが見て、パパは上の子の授業参観に出るといった連携がしやすくなるなど、産後パパ育休のような制度を使わなくても対処できる育児家事上の課題はたくさんあります。お子さんのことはできるだけ自分が中心となって育て、パパには仕事優先で頑張って欲しいと考えているママも少なくありません。
一方、有休もきちんととれないような職場だと、そもそも産後パパ育休がどの程度機能するのかも疑問です。休みが取りやすい職場環境をどう構築できるかが根本的な鍵を握っています。
――ところで、川上さんは日ごろから、産後パパ育休が「家(いえ)オペ力」という貴重なスキルをつける経験になると、非常にユニークかつ大事な指摘をされています。「家オペ力」とは何ですか。
川上さん 家オペ力とは、家周りの仕事をオペレーションする力の略称です。よく、家事育児に専念している期間のことをブランクなどと呼びますが、実際にはブランクなどではなく、その間も家オペ力が磨かれている成長期間なのです。家オペ力を見てください。
家事や育児など、家周りの仕事に真摯に取り組めば取り組むほど、さまざまなソフトスキルが磨かれます。例えば、多くの人が集まるご近所さんやPTAなどの場で磨かれるコミュニケーションスキル。
毎日、家族が飽きないように、かつ栄養バランスと家計なども考えながら最適な食事の献立を考える企画力。一日3食を家族4人分作る場合、年間で「3食×4人×365日=4380食」の料理を毎日作り続ける実行力などです。
ほかにも、マネジメント力やリーダーシップ、コスト改善力などさまざまな場面を通してさまざまなソフトスキルが磨かれます。ソフトスキルは、資格や職歴など限られた範囲でしか機能しないハードスキルとは異なり、あらゆる職種のあらゆる職場で機能するポータブル(持ち運びできる)スキルです。
仕事はもちろん、人としての成長も促してくれる万能スキルと言えます。