駐日パレスチナ常駐総代表部のワリード・シアム大使が2023年10月13日に東京・丸の内の日本外国特派員協会で開いた記者会見で、報道内容を理由に英字紙記者からの質問を拒否する場面があった。
この日の1面に駐日イスラエル大使の写真を載せ、パレスチナ側の主張を伝えていない、というのがその理由だ。拒否されたのは英字紙「ジャパンタイムズ」の質問だったが、同紙1面にはイスラエルやパレスチナに関する記事は載っていない。駐日イスラエル大使の写真を1面に載せたのは、読売新聞が発行する英字紙「ジャパン・ニューズ」だった。
「今日も新聞を読んだが、パレスチナ人の意見はまったく見当たらなかった」
記者会見は、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織、ハマスがイスラエルに大規模な攻撃を仕掛けたことを受けて開かれた。シアム氏は、
「起きていることの核心的な問題は、今日や昨日のことではないことを知っておいてほしい」
として、パレスチナ人がイスラエルの軍事占領下に置かれてきた歴史に目を向けるように訴える一方で、
「パレスチナ側とイスラエル側の双方における暴力を明確に非難する」
とも述べた。
答弁拒否があったのは記者会見の終盤。ジャパンタイムズの記者が
「日本には何人のパレスチナ人が住んでいるのか。最近の出来事に対して、(パレスチナ人)コミュニティは何らかの形で動員されているのか」
と質問したのに対して、シアム氏は
「私はジャパンタイムズが大好きだ。だから今日も新聞を読んだが、パレスチナ人の意見はまったく見当たらなかった。イスラエル大使の写真が1面に載っていたのに、パレスチナ側については何も載っていない。ジャパンタイムズがいかに『中立』であるかがわかる」
と応じた。「中立」の部分を強調しており、皮肉として発言していることが分かる。
その上で「質問は日本の出入国在留管理庁へ。私は数字を持ち合わせていない」と続けた。記者が動員の有無について改めて質問すると、
「今回は、ジャパンタイムズからの質問は受けない。ガザで起きていることに関する報道が中立ではないからだ」
として回答を拒んだ。