6月には報じられていた埼玉・虐待禁止条例改正案 可決直前でメディアの論調一転

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   埼玉県議会に自民党議員団が提出していた県虐待禁止条例改正案は、県内外から反対が相次いだことを背景に、2023年10月10日になって一転、取り下げられた。

   改正案は10月4日に提出され、6日に委員会で可決。13日の本会議での採決を控えていた。改正案をめぐる動向は、一部では6月末には報じられていたが、その時点では懸念点は指摘されず、本格的に問題になったのは委員会通過後の7~9日の3連休だった。

  • 新聞は条例改選案をめぐる問題をどう伝えたのか(写真はイメージ)
    新聞は条例改選案をめぐる問題をどう伝えたのか(写真はイメージ)
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6月の初報では「放置・置き去り」による死亡事案を列挙

   改正案は、子どもを自宅や車内などに放置することを禁止する内容。成人の「養護者」が小学3年生以下の子どもを放置することを禁止し、小学4年生~6年生については努力義務とする。罰則はないが、県民には通報を義務づけるとしていた。条例の前提が子育て世代の実情とかけ離れているとして、批判が相次いでいた。

   「虐待禁止条例」の文言が紙面に登場する記事を追う限りでは、最初に改正案の動向を報じたのは6月20日の読売新聞。埼玉県版に「子の放置は虐待、防止義務 自民県議団 条例改正へ議論」の見出しで掲載された。自民県議団が6月19日にプロジェクトチーム(PT)の初会合を開いたタイミングでの掲載だ。素案の内容を紹介した上で、背景を「自民県議団が子どもの放置・置き去りの防止強化を急ぐのは、悲惨な事故が全国で相次いでいるからだ」などと説明し、「放置・置き去り」による死亡事案を列挙した。内容に対する懸念への言及はない。読売が初めて懸念点に言及したのは委員会通過を伝える10月7日付の記事で、

「反対した議員からは『子どもの預け先がない親をさらに追い詰める内容だ』などと慎重な意見が相次いだ」

とある。

   次が9月23日付の朝日新聞埼玉県版。9月22日に県議会の9月定例会がスタートしたタイミングだ。見出しは「子ども放置ダメ『条例化を』 置き去り事案、全国で相次ぐ 自民県議団、改正案」。読売と同趣旨の内容で、「置き去りにされた子どもの死亡事案は、各地で相次いでいる」として、背景も解説。やはり懸念点への言及はない。

   朝日が次に「虐待禁止条例改正案」について報じたのは委員会通過後の10月9日。第1社会面(東京本社版)で「子ども放置禁止、条例案波紋 自民提出『子だけの登下校や留守番も虐待』 埼玉県議会」の見出しで大々的に展開した。

地元紙は全国紙に先越される

   毎日新聞の初報は委員会通過時点の10月7日。「児童放置禁止、義務化へ 条例改正案、県議会委員会で可決 『家庭負担、虐待助長』批判も」の見出しで、反対意見も盛り込んだ。産経は撤回後の10月11日付けで「子供だけの留守番・公園遊び・登下校× 『虐待』条例案を撤回」の見出しで掲載。日経も同じく10月11日、「埼玉の自民県議団、子ども放置禁止条例案取り下げ 批判相次ぎ」と伝えた。

   地元紙の埼玉新聞は全国紙に先を越され、初報は改正案提出時点の10月5日。「児童放置禁止を義務化 自民県議団が条例改正案」の見出しで、

「4日の本会議質疑では伊藤初美県議(共産)が『禁止する内容があまりに広い』として、該当する状況の確認と同県議団が募集した県民コメントの公開を求めた」

といった反対意見も盛り込んだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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