「日中関係を妨げるもの」原発処理水問題は日本36.7%も...中国5.8% 共同世論調査で明らかに

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   恒例の「日中共同世論調査」の2023年の結果が10月10日に発表され、東京電力福島第1原発で出た処理水の海洋放出をめぐる捉え方が日中で大きく異なることが明らかになった。

   処理水問題をめぐっては、中国政府は強く日本を批判し、日本産水産品の全面輸入禁止措置に踏み切った。これを機に日中関係がさらに悪化したとの見方も出ていた。ところが、「日中関係の発展を妨げるもの」を複数回答で挙げてもらったところ、日本では36.7%が処理水問題を挙げたのに対して、中国では5.8%。国民感情レベルでは、日本国民の方が処理水問題を重視していたことになる。ただ、日本で中国に対する印象を「良くない」と考える人は約9割で、高止まりが続いている。

  • 世論調査結果を発表する記者会見は東京と北京を結んで開かれた
    世論調査結果を発表する記者会見は東京と北京を結んで開かれた
  • 「日中関係の発展を妨げるもの」では日中で大きな違いが出た(写真は言論NPOの発表資料から)
    「日中関係の発展を妨げるもの」では日中で大きな違いが出た(写真は言論NPOの発表資料から)
  • 日本では33.2%、中国では47.6%が処理水放出を「心配」だと回答した(写真は言論NPOの発表資料から)
    日本では33.2%、中国では47.6%が処理水放出を「心配」だと回答した(写真は言論NPOの発表資料から)
  • 両国に対する印象を聞く設問では、「良くない」とする回答が引き続き圧倒的に多い(写真は言論NPOの発表資料から)
    両国に対する印象を聞く設問では、「良くない」とする回答が引き続き圧倒的に多い(写真は言論NPOの発表資料から)
  • 世論調査結果を発表する記者会見は東京と北京を結んで開かれた
  • 「日中関係の発展を妨げるもの」では日中で大きな違いが出た(写真は言論NPOの発表資料から)
  • 日本では33.2%、中国では47.6%が処理水放出を「心配」だと回答した(写真は言論NPOの発表資料から)
  • 両国に対する印象を聞く設問では、「良くない」とする回答が引き続き圧倒的に多い(写真は言論NPOの発表資料から)

処理水問題は「政治的な対立の道具に」

   世論調査は今回が19回目で、日本のNPO「言論NPO」と中国の「中国国際伝播集団」が、日本で9月、中国で8月下旬から9月初旬にかけて行った。処理水放出が始まったのは8月24日だ。

   「福島第1原発の処理水放出を心配しているか」という問いに対して、日本側は「ある程度心配している」24.3%、「大変心配している」8.9%と合計33.2%が「心配」だとしている。中国側はそれぞれ25.5%、22.1%。合計すると47.6%で、日本よりも心配している人の割合は高い。

   科学的な検証に加えて「安心」のための説明は必要だとする声は日中ともに多い。日本では「IAEA(国際原子力機関)検証は信頼しているが、日本政府は不信感の解消でさらなる努力をすべき」と答えた人が47.2%にのぼった。中国でも33.9%が同様の回答をしている。

   ところが、中国側では、処理水問題で日中関係の悪化につながったとの見方は多くない。「日中関係の発展を妨げるもの」を複数回答で聞いたところ、日本側で最も多かったのは「領土をめぐる対立(尖閣諸島問題)があること」の43.6%で、それに次いで多かったのが処理水問題の36.7%だった。中国側で最も多かったのは「領土をめぐる対立」39.5%。「経済摩擦」28.6%、「海洋資源などをめぐる紛争」28.2%などが続き、処理水問題を挙げたのは5.8%に過ぎなかった。

   この結果を、言論NPOの工藤泰志代表は

「この問題は政治的な対立の道具に使われてしまって、本当の意味で国民的な安心という問題とかけ離れてしまっている」

とみる。

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