購入業者が自宅に来て物品を買い取る、「訪問購入」をめぐるトラブル相談が、ここ数年増えている。
不要品だけを引き取ってもらうはずだったのに、途中で「貴金属はないか」と豹変――。国民生活センターは2023年9月27日、「不用なお皿の買い取りのはずが、大切な貴金属も強引に買い取られた!」という警鐘を鳴らす発表をした。
どうしたら被害を防げるか。同センターの調査担当者に聞いた。
「金」の高騰が遠因に
国民生活センターによると、訪問購入をめぐる相談件数は、コロナ禍の2020年頃ごろから増え始めている【図表】。相談者の約76%が女性というのが特徴で、契約当事者全体の8割近くが60歳以上のシニアだ。
具体的な事例では、こんなケースが代表的だ。
【事例1】皿だけのはずが、売る気がない貴金属まで強引に買い取られた 突然自宅に電話がかかってきて「不用な皿や、ぬいぐるみはないか」と言う。「ぬいぐるみはないので、訪問は不要」と断りの電話を入れたら、「皿1枚でもいいので」と言われ、しかたなく訪問を承諾し、不用な皿を数枚準備した。業者の訪問を受け、皿を全部100円で買い取ってもらった。 その後、「ネックレスなどはないか。売らなくてもいい、鑑定してあげるから見せて」と言われ指輪等の貴金属を見せた。「これは汚れがあり、小さいので高く売れない。当社なら高く買い取る」と言われ、売るとは言っていないのに、書面に金額を入れ、持ってきた袋に勝手に指輪などを入れた。「書面に名前を書くように」と言われ、よくわからないまま名前を書いた。 貴金属7点で約5000円と格安で買い取られてしまった。売ったことを後悔し、業者にクーリング・オフしたいと電話したら、「書類に署名をしているのでできない」と断られた。売ったもの全てを返してほしい。(2023年7月・70歳代女性)
【事例2】クーリング・オフ後返品してもらったが、指輪が2つ足りない 実家の不用品処分のため、新聞の折り込み広告に出ていた購入業者に連絡し、来てもらった。買い取りを依頼したい家具を見てもらうと、「他に時計や貴金属はないか」と言われ、購入業者に手伝ってもらいながら探すと、指輪数点とブランドのバッグや財布が出てきた。 購入業者が記入した買い取り契約書の内容確認後に署名して、約2万円を受け取った。帰宅した家族に「物品を取り返したほうがいい」と言われたので、翌日購入業者に電話して物品を返してもらい、お金を返した。物品はきれいな状態で戻って来たが、指輪2つがなかった。購入業者に連絡しても「返品した」と言うだけで話が進まない。どうすればよいか。(2023年6月・60歳代女性)
こうした被害をどう防げばよいのか。J-CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した国民生活センター相談情報部の岩﨑直子さんに話を聞いた。
――なぜ、ここ数年、訪問購入業者に貴金属を強引に買い取られる相談が増えているのでしょうか。
岩﨑直子さん 理由は2つあると思っています。1つはコロナ禍になって在宅でいることが増えたため、高齢女性が家の中の不要品の整理を始めるようになったことです。それで、買い取り業者を呼ぶようになりました。
2つ目は、ちょうどコロナの頃から金の価格が高騰し始めたこと。経済リスクが高まると、安全資産として金の値段があがります。現在の金の価格は、コロナ以前の2019年の2倍以上に跳ねあがっています。