「俺が決めていいなら...」原作者が参加する同人誌即売会「博麗神社例大祭」の特異性 代表が設立経緯とコロナ禍を振り返る

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「東京ビッグサイト」の会場問題

   同人界隈はここ数年、「会場問題」に悩まされた。例大祭やコミックマーケットをはじめとする大規模同人誌即売会は、総展示面積11万5420平方メートルを誇る東京ビッグサイトを用いている。

   2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴い、19年4月から東ホール、20年4月からは残る西ホールが10月まで閉鎖された。国際放送センター、メインプレスセンターとして利用されたためだ。仮設会場として用意した青海展示棟の総展示面積はわずか2万3000平方メートルほどで十分なキャパシティがあるとは言えなかった。日本で2番目に広いイベント会場である幕張メッセも競技会場として利用されていたため、コミックマーケットをはじめとする大規模同人誌即売会が苦悩した。

――最近はコロナ禍で苦戦されたと思いますが、その前には東京五輪がありました。

北條さん:ありましたね。最初に我々が出した答えは「開催場所が東京じゃなくてもいいんじゃないか」でした。そうはいっても全国各地で東方オンリーは行われていますし、既にほかの団体がイベントを開催している場所に出張るのもなるべくさけたい。地方に離れるほどスタッフを集めることが難しくなり、機材や備品を運ぶのも大変ですが、最終的にはギリギリ開催可能な距離であるとして静岡を選びました。

――地方開催に踏み切るのは容易ではないと思いますが、なぜできたと思いますか。

北條さん:1つは統括責任者が最低でも月1で集まって会議を開き、物事を合議制で進める形をとっていたためです。やると決めたらどんな風に進めるか半分ノリで話し合いを進めました。他の即売会だったらそんなにすんなりいかないのではないかと感じます。地方開催それ自体も「企画」の延長、チャレンジの一環としてうまい方向に定まったように感じます。

――コロナ禍に突入すると、多くのイベントが中止や延期を余儀なくされ、経済的にも大きなダメージを受けました。

北條さん:例大祭もほぼ1年間イベントができなくなりました。静岡開催を告知したのはコロナ禍直前のことでした。観光協会、商工会、地元のお弁当屋さんなど地域の方々からも企画に対するご協力を頂き、カタログの表紙はマンガ家の岸田メルさんが描いてくださいました。しかし残念ながら2020年3月にコロナ禍が猛威を振るい始め、ギリギリまで会場と調整を続けていましたが、地元の関係各所や静岡市からも中止してほしいという声が寄せられました。5月の延期開催もかなわず、正式に中止となりました。
ただ接触機会の増えるイベントはできませんでしたが、どうせ予約もなく空いているからと会場を生放送用に貸してもらえました。イベントを行うはずだった会場から「来年絶対リベンジしたいと思っている。頑張ってやっていくんで皆さんも応援してくださいね」と決意表明の生放送を行いました。

――リベンジはいつできたのでしょうか。

北條さん:21年3月に静岡でリベンジ開催を行いました。これが失敗したら正直終わりだったかと思います。イベントを復活させられるまでは、このままだめになってしまうのではないかという気持ち半分で過ごしてきました。一回一回をぎりぎりのキャッシュフローで回していたので、これが中止となってものすごいダメージになりました。しかしすでに販売していたカタログを、例大祭の参加者がものすごく買ってくださいました。
ZUNさんからも買いたいとお声がけいただきました。さらに当時、東方Projectの名を利用したクラウドファンディングは認められていませんでしたが、特例でやっても構わないとも言っていただきました。しかしそれは最後の手段だと。立ち行かなくなって何もできなくなった時にやろうと思い、本当に薄氷一枚ギリギリのところでとどまっていました。
イベント当日は春の嵐のような大変な天気でしたが、参加者の皆さんは嫌な顔一つせず、ずぶ濡れになりながら列に並んでくれました。ZUNさんも新作を用意してくれました。全員がマスク、消毒、検温を徹底して、黙って参加するという厳戒態勢ながらも、静かな熱気は感じました。スタッフやサークル参加者さんはもちろん、会場からもお褒め頂きました。

――東京開催の同人誌即売会は全く別のストーリーがあったんですね。

北條さん:東京でなかったから、この時期に開催できた可能性はありますね。会場や自治体の理解が得られたことは大きかったです。
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