「俺が決めていいなら...」原作者が参加する同人誌即売会「博麗神社例大祭」の特異性 代表が設立経緯とコロナ禍を振り返る

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同人誌即売会「例大祭」の特異性

――例大祭と言えば、関係者によるトークイベントや音楽サークルによるライブなど他の同人誌即売会には見られない企画もありますね。

北條さん: 10回目まではジャンルの勢いもあってサークル数が増加傾向にありましたが、11回目以降はサークル数がちょっとずつ減り始めました。最も多かった第10回は5000サークルを超えましたが、ここが限界ではないかと考えはじめ企画性の強い要素を取り入れるようになりました。
当時「同人誌即売でそういうことするのはどうなの?」という意見もなくはなかったんですが、我々としては単なる同人誌即売会というよりは、「東方好きが集う面白いイベント」にしていきたかった。一人で行っても必ずたくさんの同志がいて、そこにたくさんの東方のコンテンツがあって、一日楽しむことができる。つまり普通の即売会だったら目当ての本を買ってちょっと見て回って帰る参加者が多いですが、我々のイベントは買い物だけなく企画も楽しんで帰られる参加者が多いです。全体の8割ほどは閉会まで残っているかなと思います。サークルさんもほぼ帰らず最後までお付き合いいただくことが多いです。

――昨今、同人誌即売会のスタッフや参加者が高齢化しているというお話も聞きます。例大祭については、若い参加者が多いことも特徴的ですね。「初めて訪れた同人誌即売会は例大祭だった」という話も聞きます。

北條さん:現状だとおそらく10代、20代が来場者の7~8割ぐらい。もっというと10代以下の子も多くて親子連れの姿も目立ちます。例大祭は即売会というよりも「イベント」としての側面を前に出し、情報発信を続けました。
SNSやウェブはもちろんですが、初期の頃、特に我々が重視していたのは「ニコニコ超会議」です。当初はドワンゴさんから併催イベントの形でご提案を受けたのですが、会場内に即売会を設けるだけでは正直「つまらないな」と。うちとしてはニコニコ超会議で面白いと感じてくれた子たちを例大祭に呼び込みたかった。なぜならニコニコ超会議に来るのはライトなオタク層で、ちょうど開催時期もニコニコ超会議はゴールデンウィークの初め、例大祭は最後の方だったからです。そこでドワンゴさんに交渉して、例大祭のスタッフ体験や、オリジナルマグカップや缶バッチを制作できるコーナーを設けました。受けが良かったのでコロナ禍前まで続けることができ、超会議からの流入を増やしました。
次に重視したのが動画配信です。ニコニコ超会議が動画文化だったこともあり、例大祭の情報を発信する生放送を月1ペースで始めました。ショート動画なども始めました。最近は元から興味の強い人以外はなかなか自発的に情報を取りに来ません。流し見ていた動画に興味があれば食いつく傾向にあります。そのために、FacebookやYouTubeで流れてくるようなショート動画を制作し、「行ってみようかな」と思える情報を盛り込みました。こういった情報発信はどこのイベントよりも率先して取り組めたと思います。

――ターゲットをはっきり定めて情報を発信できていたんですね。

北條さん:情報発信が好きなメンバーたちが生放送専用のチームを作って本格的に取り組み、他の即売会とは違う参加者層が増えてきたと感じています。
若者向けの企画としては、有志の作家さんが絵の描き方を教えてくれる塗り絵企画や、子供向けのイラストコンテストも行っています。コンテストは18年から始めて、20年は開催できませんでしたが21年から再開しました。技量が高い作品も多いです。これが応募作をまとめた冊子です。今年は420作品くらい応募があって、小中学生だけでこれだけの数が来るのはすごくないですか?

――すごいですね!キャラや世界観を理解して描かれている絵が多く、構図にも工夫が見られます。

北條さん:これをきっかけに例大祭に来てくれる小中学生も増えました。優勝者には表彰式があり、実際にZUNさんとお話しできる機会も設けていました。これも例大祭の活力の一つになっています。
企画はお金も手間もかかりますが、イベントが盛り上がれば参加者が集まりやすく、人が集まるところにサークルさんも本を売りに来てくれます。
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