「オフロードパス」アルゼンチン戦でなぜ有効? 「リスクあるが、リターンも大きい」元W杯日本代表が指摘する「8強への戦術」

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   ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会1次リーグD組第4戦の日本対アルゼンチン戦が2023年10月8日に行われる。両国2勝1敗で並び勝利したチームが決勝トーナメントに進出する。世界ランク12位の日本が、同9位アルゼンチンに勝利することはできるのか。元日本代表で15年W杯イングランド大会に出場した経験を持つ藤田慶和氏(三重ホンダヒート、30)はJ-CASTニュースの取材に、日本の戦術や展望などを語った。

  • サモア戦に勝利しファンの声援に応える日本代表(写真:AP/アフロ)
    サモア戦に勝利しファンの声援に応える日本代表(写真:AP/アフロ)
  • サモア戦に勝利しファンの声援に応える日本代表(写真:AP/アフロ)

「バックスで前に出てフォワードを助けたいという意図が」

   日本は1次リーグ初戦のチリ戦を42-12で勝利し、第2戦のイングランド戦を12-34で落とした。1勝1敗で迎えた第3戦のサモア戦では、SO松田力也の正確なキックを武器に堅い守りでサモアの攻撃をしのぎ28-22で勝利した。

   一方のアルゼンチンは初戦のイングランド戦を10-27で落とすも、続くサモア、チリに連勝し2勝1敗とした。07年W杯では3位に入り15年には4位となった。フィジカルが強くスキルもあり、チーム総合力は世界トップレベルにある。

   スポーツ紙の現地報道によると、アルゼンチン戦を控えた日本は2日に練習を15分間公開し、FW陣はタックルを、バックス陣はオフロードパスを入念に確認したという。藤田氏はバックス陣がオフロードパスを確認した意図を次のように解説した。

「オフロードパスとは相手にタックルをされながら味方にボールを繋ぐプレーです。アルゼンチン戦に限らず、オフロードパスが繋がるとボールを優位に前に運ぶことができ、ゲームのアタックの流れを作りやすくなります。これをアルゼンチン戦に当てはめてみると、フォワードが強いチームなので日本はフォワード戦で劣勢な形になると予想され、日本としてはできるだけバックスで前に出てフォワードを助けたいという意図があると思います」

   さらに「体格が大きい選手の方が有利ですが、日本のバックスにはステップワークが良い選手が多いので、相手のタイミングをずらしてタックルを入らせ、オフロードパスで繋いでいくことができます。良い場面でしっかりと精度を高く使っていけばかなり有効になるプレーだと思います。現地でオフロードパスを確認するくらいなので意図的に使っていこうとしているのではないでしょうか」と分析した。

   オフロードパスは連続して攻撃を仕掛けることで大きく前進し、トライのチャンスが生まれる一方で、ある一定のリスクを伴うという。

「リスクがありながらパスが繋がればリターンも大きい」

「非常にリスクが高いというプレーではありませんが、コンタクトのシチュエーションでボールを離すのでボールが繋がらなかった場合はピンチに陥ります。ですから『これは繋がるな』という場面でオフロードパスを狙っていきます。オフロードパスが繋がればラインブレイクやゲインをした状態でアタックができるので、相手はそこまで下がらないといけない。アタックにもテンポが出てきますし、日本のスピーディーなラグビーができる。リスクがありながら、パスが繋がればリターンも大きいプレーです」

   8日の試合ではフィジカルの強いアルゼンチンのバックスがオフロードパスを多用し、揺さぶってくることが予想される。日本はどのように対応するべきなのか。藤田氏は次のように説明した。

「まずは1人目の選手がタックルを外されないことです。優位な位置でタックルをすることが重要になってきます。オフロードパスを繋がせないために、タックルに行く2人目の選手がしっかりとボールに働きかける。オフロードパスをする手を防げば繋がらないので、1人目がしっかりタックルに入ることと、2人目がボールに対して仕掛けていくことが大事になってきます。日本の武器でもある低いタックルが強みになります」

   藤田氏は自身が日本代表としてプレーしていた時代を振り返り、現在の代表チームと戦術面での違いを指摘した。15年W杯イングランド大会はエディー・ジョーンズ氏(63)が監督として指揮を執った。今大会は19年W杯日本大会に続いてジェイミー・ジョセフ氏(53)が監督を務めている。

「エディーさんのラグビーはどちらかというとオフロードパスはあまり使わず、どんどんフェーズを重ねてラックをたくさん作って攻め続けて走り勝とうというラグビーでした。オフロードパスは多用しませんでした。ジェイミー・ジョセフさんは、リスクを伴うけどもハイリターンがあるラグビーをするのでキックも多用しますし、オフロードパスもチャンスがあればチャレンジする。監督の戦略、方針の違いで攻め方が変わり、その戦術に見合った選手が招集されます」

   藤田氏は日本代表の攻撃を担当するトニー・ブラウンコーチ(48)に言及し、アイデアマンのブラウンコーチがアルゼンチン戦で今大会初めて披露する「スペシャル」なプレーを用意していると予測した。

「アルゼンチンは型にはまらないラグビーをする」

「トニー・ブラウンさんはアイデアマンでサインプレーなど面白いことをしてくる。イングランド戦でスクラムハーフの流(大)さんが後ろ向きでキックしたりチャレンジングなことをやっていました。それがチャンスになると考えて色々とアイデアを出してやってくるので。アルゼンチン戦ではスペシャルなプレーが確実に用意されていると思います。この大一番に取っておいたプレーや戦術があると思います」

   そして自身のW杯での経験を踏まえて次のように分析した。

「私が日本代表でプレーした時もセットプレーからのサインプレーなどが、大切な試合でいくつか用意されていました。元々の形はそれほど変わりませんが、今まで見せてこなかったサインプレーや、相手の意表を突くようなことをすることがありました。もしかしたらこれまでと全く違う戦いをする可能性もあると思います。相手チームによってスタイルを変えられるようなラグビーなので、形を大きく変えないかもしれませんがプレーなどを変えてくる可能性はあると思います」

   1次リーグD組はすでにイングランドが決勝トーナメント進出を決めており、日本対アルゼンチン戦の勝者が2位通過となる。引き分けの場合はボーナスポイント(4トライ以上)、得失点差などで2位が決まる。

   藤田氏は「アルゼンチン戦は相手の弱みをしっかりと突くというイメージだと思います」とし、アルゼンチンの特徴を解説しながら展望を語った。

「アルゼンチンは型にはまらないラグビーをしてきます。様々な場面でオフロードパスは考えられますし、キックも多用してくるチーム。サッカーの人気がある国らしく、みなキックがうまく色々なことをしてくるチームです。ダブルタックルに入らないとゲインされる可能性はあります。しかしチャンスは必ずあると思います。日本の強みをしっかり出していけば勝てない相手ではないと思います」
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