プロ野球巨人の阿部慎之助ヘッド兼バッテリーコーチ(44)が新監督に就任した。今季限りで退任した原辰徳監督(65)の後任となる。チームは今季4位で2連続Bクラスに終わった。V奪回を目指す阿部巨人に何が必要で、改善すべき課題はどこにあるのか。J-CASTニュースは、原監督の第2次政権で戦略コーチを務め、リーグ優勝、日本一に貢献した橋上秀樹氏(57)に分析してもらった。
「来シーズンはさらにプラス要素が多くなる」
阿部監督は00年ドラフト1位(逆指名)で巨人に入団。守備では扇の要である捕手として、打者としてはチームの主軸を担い19年間チームをけん引した。引退後の20年に巨人の2軍監督に就任し、1軍作戦コーチ、ディフェンスチーフコーチなどを歴任。原監督の下で4年間、指導者として修業を積んできた。
橋上氏は自身の経験を踏まえ「阿部慎之助という監督がどういう野球をするかということを選手、コーチにいかに早い段階で浸透させるかが大事になる。原監督と全く一緒の野球にはならないでしょうから阿部監督が求めるものをまずコーチが理解して、理解したものを選手に落としていく。秋のキャンプから来シーズンの開幕までにいかに選手に浸透させることができるかが大きなポイントになる」と解説した。
今季はリーグトップのチーム打率(.252)を誇るもチーム防御率(3.39)はリーグ5位と、投手力に課題を残した。勝ちパターンのリリーフを固定できず、終盤に逆転を許す試合が多く見られた。橋上氏は「原監督は投手に関してはあまり方向性がないように感じました」とし、投手陣の戦力は他球団に比べても遜色はないとした。
「チーム防御率はあまり良くないが、若い先発投手がだいぶ出てきている。阪神と比べると見劣りはするが、セ・リーグ全体の中ではそれほど悪くはない。今季投げた投手の年齢を考えると、来シーズンはさらにプラス要素が多くなる。今までバタバタして焦れば焦るほどストライクが入らなかった投手は、監督がどっしり構えていれば落ち着いたプレーができるようになると思います。セ・リーグは戦力が拮抗しているので巨人が来季優勝しても不思議ではない。戦力的に若い先発投手が出てきている。阪神が盤石で何連覇もするかという状態ではないので十分に付け入るスキはある」
「視野が広いのがキャッチャー出身の監督の共通点」
橋上氏は、阿部監督は原監督の下で多くを学んだと指摘した。指導者として2軍監督を務めたことも今後に生きるとの見解を示した。
「阿部監督は今年の原監督の姿を見て我慢することの大切さを学んだと思います。原監督は若い選手に対して結果を求めすぎたため、チーム全体に落ち着きがなかったことを分かっていると思います。キャッチャー出身の監督は比較的慎重で、あまり動かずどっしりした方が多い。視野が広いのがキャッチャー出身監督の共通するところ。投手の難しさを理解していると考えれば、若い選手に関しては多少の失敗は我慢することが必要だと感じていると思います」
阿部監督は安田学園高校の後輩にあたり、コーチ時代にバッティングの指導をした経験を持つ橋上氏は、阿部監督のリーダーシップを高く評価する。
「阿部監督は現役のころは守備の扇の要であって打線の要でもあり、カリスマ的なところがある」とし、「阿部監督の現役時代を見て育ってきた選手も多い。若い選手は距離を感じるものがいるかもしれないが、阿部監督が上手く選手との距離を縮め、うまくコミュケーションを取っていくでしょう。監督としての方向性をしっかり持っていると思います」と期待を寄せた。
選手補強、育成に関しては転換期を迎えているとした。巨人は2年連続でフリーエージェント(FA)での補強を見送ったが、それまでは積極的にFA戦線に参入し多くの選手を獲得してきた。
橋上氏は「FAに頼るスタンスを変える良いタイミングだと思います。オリックスを見ると、自前の選手を育ててきたのでチームが安定した力を発揮している。見習う所は見習った方が良い。現有戦力の底上げというところにチーム強化の柱を持っていくべきだと思います」との見解を示した。