インボイスが「副業したい」意欲そぐ それでも始めるには...識者に聞く制度との向き合い方

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   インボイス(適格請求書)制度が2023年10月1日から始まった。副業したいと願う人にとっては、どう対応したらよいか、なかなか難しい制度でもある。

   そんななか、働く女性のホンネ調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が2023年9月28日、「『インボイス制度』を副業したい主婦・主夫層は知っているか?」という調査を発表した。

   インボイス制度は、副業を目指す働く人にとって、マイナスになることがうかがえる結果になった。では、インボイス制度と折り合いをつけ、気持ちよく副業するにはどうしたらよいか。調査担当者に聞いた。

  • スキルがあれば自宅で副業したい(写真はイメージ)
    スキルがあれば自宅で副業したい(写真はイメージ)
  • (図表1)副業をしたいと思うか(しゅふJOB総研の調査)
    (図表1)副業をしたいと思うか(しゅふJOB総研の調査)
  • (図表2)インボイス制度を知っているか:副業をしたい・したくない別比較(しゅふJOB総研の調査)
    (図表2)インボイス制度を知っているか:副業をしたい・したくない別比較(しゅふJOB総研の調査)
  • (図表3)インボイス制度と副業の意欲:副業をしたい・したくない別比較(しゅふJOB総研の調査)
    (図表3)インボイス制度と副業の意欲:副業をしたい・したくない別比較(しゅふJOB総研の調査)
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  • (図表1)副業をしたいと思うか(しゅふJOB総研の調査)
  • (図表2)インボイス制度を知っているか:副業をしたい・したくない別比較(しゅふJOB総研の調査)
  • (図表3)インボイス制度と副業の意欲:副業をしたい・したくない別比較(しゅふJOB総研の調査)

インボイス「知っている」9割

   調査では、有効回答数が558件だった。まず、「副業したいと思うか」を聞くと、「思う」(53.9%)が半数以上を占めて、「思わない」(13.1%)を大きく上回った【図表1】。

   続いて、「インボイス制度について知っているかどうか」を聞くと、「内容を詳しく知っている」(5.9%)、「内容を少しは知っている」(32.6%)、「言葉だけ知っている」(51.8%)を合わせて、「知っている」(90.3%)が9割を超えた。

   この結果を、「副業したいと思う人」と「副業したいと思わない人」に分けて比較したのが【図表2】だ。これを見ると、「言葉」だけではなく「内容を知っている」と答えた人の割合は、「副業をしたいと思う人」(43.8%)のほうが、「副業をしたいと思わない人」(41.1%)より高かった。それだけ関心が高いわけだ。

   一方、【図表3】は、インボイス制度が副業の意欲に与える影響を、「副業したいと思う人」と「副業したいと思わない人」に分けて比較したグラフだ。これを見ると、「副業したいと思う人」では、「副業に前向きになりそう」(8.3%)より、「副業に後ろ向きになりそう」(15.0%)が多いのが特徴だ。「副業したいと思わない人」でも、「副業に前向きになりそう」はゼロで、「副業に後ろ向きになりそう」(9.0%)が1割近くいた。

   いずれにしろ、インボイス制度は副業しようという人にとっては、マイナスに感じられるようだ。

「10本の刀を持つ、十刀流の副業をしたい」

   副業したい人々の具体的なコメントをみると、副業に対するアツイ思いが伝わってくる。調査結果から拾ってみよう。

「本業の収入が少ない時に、効率よく収入が増やせる副業があればいいなと思います」(40代:契約社員)
「他の分野の仕事もできてやり甲斐を感じる」(50代:正社員)
「自分の好きなこと、趣味がたまたま収入になるイメージ」(50代:パート)

   雇用が不安定ななか、副業がいざという時の収入源になるという意見も多かった。

「(副業が)珍しいことではなくなると思う。リスクヘッジになる」(50代:パート・アルバイト)
「可能性を広げられると思う。万が一、本業を辞める状況になった時でも完全に無職にはならない安心感がある」(40代:派遣社員)

   中には、大リーガーの大谷翔平選手顔負けのエネルギッシュな人もいる。

「二刀流とか二足のわらじとか言うけれど、私はできることなら5足くらいわらじを履いて、10本くらい刀を持ちたい」(40代:正社員)

   ところで、インボイス制度についてはどう思っているのか。こんな意見が目についた。

「請負の副業を考えていないので、インボイス導入による不便はない」(60代:契約社員)
「確定申告や、インボイス制度による手続きが面倒になる印象がある」(30代:今は働いていない)

「よくわからない」という人も多い

   これから副業を始める人は、インボイス制度をどう向き合っていけばよいのか。研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。

――インボイス制度について、「副業をしたい」と思っている人の91%が知っており、かつ、「内容を知っている」人も44%というのは、ちょっと驚きの数字です。これほど関心が高まっているのは、なぜでしょうか。

川上敬太郎さん それだけテレビやネットニュース、新聞、週刊誌などでインボイスというワードが取り上げられる機会が多かったということでしょう。

ただ、「内容を詳しく知っている」と回答した人は「副業したい」人でも7.3%にとどまっています。これまでは、消費税を納めなくてよかった個人事業主でも納める必要が出てくる、など、詳しくはわからないものの、何となくどんな話なのかは当たりがつく、というかたが多いのでしょう。

――「副業をしたい」人にとって、インボイス制度が「副業に後ろ向きになりそう」という人が15%もいますね。この数字をどうみたらよいのでしょうか。インボイスは副業にマイナスだということですか。

川上敬太郎さん やはり、インボイスに対する批判とみられますか。ただ、「変化がなさそう」「よくわからない」という人が多いことも気になります。

インボイスの導入によって、消費税分の負担をめぐり、これまでの取引に支障が生じたり、事務的な手間が増えたりと、マイナスの影響を想定している人が一定数いるということだと思います。

いまの時点では、「副業に前向きになりそう」と回答している人より、「後ろ向きになりそう」と回答している人のほうが比率は高く、インボイス制度の導入は副業意欲をそぐ方向に作用していることがうかがえます。

また、「よくわからない」と回答している人が45%を超えて最も多くなっています。今後、インボイス制度が実際に運用されるなかで、印象が変わっていかない場合は、時間の経過とともに制度内容への理解が進むにつれ、「後ろ向きになりそう」と答える人の比率はさらに高くなるかもしれません。

インボイス制度は複雑、しっかり調べること

――川上さん個人としては、「副業したい」という人には、インボイスに対する姿勢をどうアドバイスしますか。「課税事業者」「免税事業者」どちらの選択を勧めますか。

川上敬太郎さん インボイス制度については、「公平に税金を徴収するうえで必要」などと賛同する声もあれば、実質的な増税に当たるなどとして反対する声もあります。ただ、すでに制度はスタートしており、課税事業者になってインボイス発行事業者として登録したほうが、今後の取引をスムーズに進めやすいかと思います。

一方、免税事業者であれば、消費税の納付に関連する事務工数を削減できます。また、免税事業者からインボイス発行事業者になった人は、2026年分の申告まで消費税納税額を売上税額の2割に抑えられ、税負担と事務負担を軽減できるといった支援措置が用意されています。

労力はかかってしまいますが、ご自身が納得して選択するためには、国税庁や財務省のウェブサイトを確認するなどして、情報をひと通り収集されたほうが良いと思います。

――なるほど。いずれにしろ、しっかり制度を勉強して対応することが大切ですね。

川上敬太郎さん 扶養枠をめぐる「年収の壁」などもそうですが、インボイス制度も同様に制度が複雑で、わかりにくいのが大きな難点です。

インボイス制度のことを知りたいと思っても、強いモチベーションがない限り、面倒くさいという思いのほうが勝ってしまいそうです。しかしながら、制度自体を理解しなければ、その制度の是非の判断もできませんし、改善すべき点も見えづらいままになってしまいます。

政府には、できる限りわかりやすい制度にしたうえで、内容理解の促進に努めていただきたいと思います。

   調査は2023年9月12日~19日、求人サイト「しゅふJOB」の登録者など働く主婦・主夫層にインターネットを通じて行い、558人が回答した。

(J-CASTニュースBiz 福田和郎)

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