ジャニー喜多川氏=2019年に87歳で死去=による被害者でつくる「ジャニーズ性加害問題当事者の会」代表の平本淳也さん(57)と副代表の石丸志門さん(56)が2023年10月4日に国会内で行われた立憲民主党のヒアリングに出席し、性被害を受けた人が相談しやすくする体制の充実を訴えた。
政府はすでに相談窓口を設けているが、都道府県や警察庁など「縦割り」になっている上に、相談した際にどんなサポートが受けられるのかが伝わっていないとしている。
性被害を相談できるのは「被害者どうし」
平本さんは、被害を受けた時点では被害を受けたことにすら気づかず、時間がたってしまうことがある点を指摘。親は「一番のファン」でもあり、心配させないために相談するのが難しいと説明した。そんな中で相談できるのが「被害者どうし」。逆に言えば、被害者以外には相談しにくい環境が今でも続いている。
「いわゆるタレントどうし、仲間どうしで話せる。それも、ざっくばらんに気軽に、むしろ明るく。そのような環境の中で知り得る、というものが代々受け継がれているという事実がある。これって何だろうと...。理解しあえる関係性、そして、話しても、自分が『変、おかしい、気持ち悪い』等々思われない安心感がある。つまりは、今、全部そうです」
性被害に遭ったときの主な相談先としては、内閣府の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」(#8891(はやくワンストップ))や、警察の「性犯罪被害相談電話」(#8103(ハートさん))などがある。ただ、石丸さんは、こういった窓口は機能していないとみる。
「では、そこに電話したら、誰が出てくれるのか、何の話を聞いてくれるのか。一体何をサポートしてくれるのか、これが分からない」
「これを、どうやったら、誰に相談すればいいのでしょうか?」
性被害が「親にも言えないこと」である以上、相談窓口の電話番号を教えられても、実際に電話するのは難しいとみている。石丸さんは喜多川氏から50回以上被害を受けたとしており、そのうち1回は肛門性交を強要されたとしている。そういった環境での相談の難しさを訴えた。
「17歳の人間が、55歳のおじさん相手に肛門性交する。この異常さというものは、皆さんお分かりいただけますでしょうか。これを、どうやったら、誰に相談すればいいのでしょうか? そういう相談窓口を、国が率先して開いて『ここに相談したら安心ですよ』、そういうメッセージを発していただきたい」
松野博一官房長官は、ジャニーズ事務所が会見した10月2日、所感を問われて
「個別の企業の経営判断に関してコメントすることは差し控えさせていただく」
と述べた上で、一般的な性被害に対する取り組みについて答弁するにとどめている。
石丸さんはこの状況を念頭に
「せめて『状況を注視している』などの発言をしてもいいのではないかと、そういうフェーズに入るのではないかと強く思う」
と話した。
「当事者の会」にジャニーズ以外の訴えが寄せられる理由
こうした指摘に対して、内閣府の担当者は
「(相談窓口を)分かりやすくお知らせをしていく努力というのを、対策の取り組みの中で行っていきたい」
などと答弁した。
ヒアリング後に取材に応じた平本さんによると、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」には、ジャニーズ事務所とは関係ない性被害の訴えも多く寄せられており、「圧倒的に女性からのものが多い」という。その背景を
「全く同じではないが、同じ(被害者という)立場である関係性ということにおいて、おそらく安心していただけているのではないか。そこに大きなヒントがあるのでは」
とみている。石丸さんは
「本来であれば、一元的に、省庁横断的に対応ができる、安心のできる窓口というものが必要」
だと改めて訴えた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)