故・ジャニー喜多川氏の性加害問題で、東京新聞が、この問題に沈黙してきた責任を認め、「私たちは反省します」と題するウェブ版記事を出したことが、インターネット上で関心を集めている。
その姿勢を評価する声もあるが、疑問の声も出て、論議になっている。
「その人権意識の低さを反省」
東京新聞ウェブ版に載った2023年10月3日付のこの記事では、「東京新聞はジャニー喜多川氏の性加害問題に向き合えていませんでした」として、喜多川氏の裁判などを担当した記者らへの聞き取り結果について編集局次長名で報告した。
それによると、喜多川氏がこの問題を追及した週刊文春側を名誉毀損で訴えた裁判で、一、二審の判決は同紙で報じたものの、喜多川氏の性加害を認めた二審については、「セクハラを認定」と03年7月16日付のベタ(1段)見出しの記事にしただけだった。最高裁が喜多川氏の上告を退け、判決が確定したときは、記事にしなかった。
そして、英BBC放送が23年3月にこの問題を報じ、4月12日に元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが外国特派員協会で会見するに至って、報道した。
マスコミへの批判も高まったため、高裁判決時に裁判を担当していた複数の記者に聞くと、「まったく覚えていない」と話したという。記事化の不利益があったわけではなく、「しょせん芸能界のスキャンダル」と軽視していたため、記憶に残らなかったとした。芸能記者も、批判的な記事を出すとやりにくいだろうなと認めたものの、ジャニーズ事務所への忖度は否定した。
しかし、記事では、「忖度がなかったからといって免罪されるわけではありません」と認めた。そして、未成年者の性被害は人権問題だとして、「沈黙」の責任を考えると、「報道に携わる者としては問題とすら思わなかったことは深刻です」と断じた。今後は、「その人権意識の低さを反省」し、「弱者に寄り添った報道を続けることを約束します」と締め括っている。