愛知県高浜市内の春日神社であった「高浜おまんと祭り」で、丸太で組んだ円形馬場を走る馬を若い男性参加者が飛び蹴りする様子を撮った動画がツイッター(X)に投稿され、物議を醸している。
同神社はその後、「不適切な行いであった」と公式サイトで非を認めて謝罪した。ただ、馬に飛びつく神事自体の廃止を求める声も動物愛好者から出ており、神社側も対応に苦慮している。
馬に飛びつく神事自体に、動物愛好者から廃止を求める声も
黒っぽい馬には、背中に鈴や造花があしらわれ、馬場の入り口まで到着すると、お祭りムードが高まる。
中に入ると、馬は、法被を着た何人もの男性たちに驚いた様子で、急に場内の周りを走り始める。1周回ると、馬の左側から若い男性がいきなり飛び蹴りをした。
それでも、馬は走り続け、それを見た場内の男性たちは、手にした法被で馬を叩いた。続いて、1人の男性が馬に飛びつき、しがみついた。馬は、場内の中央付近でいったん止まり、歓声と拍手が上がる。
しかし、馬は暴れて、反対方向に場内を回り始め、男性は振り落とされる。さらに、別の男性が馬にしがみついたが、振り落とされていた。
この様子を撮った動画は、2023年9月30日にツイッターで投稿された。飛び蹴りなどは動物虐待ではないかと指摘され、拡散される騒ぎになっている。
ツイッターでは、獣医師詰所で左前脚に包帯をした馬や目に眼帯をした馬の写真も投稿されている。馬に飛びつく祭りの神事自体も、馬に負担をかけているのではないかとして、動物愛好者らからは、廃止を求める声も出ている。
その後、春日神社は10月1日、「馬への行為について」などと題するお知らせを出した。9月30日の祭りで、「馬に対して蹴ると思われる行為が確認されました」として、「不適切な行いであったと考えており、再発が無いようにまた類似の行為が無いように対応に当っていきます。大変申し訳ございませんでした」と謝罪した。
「SNSで拡散する時代に合わせ、やり方を変えないといけない」
こうした行為を受けた馬について、獣医にかかったところ、蹴られたとみられる左の側面には異常がなかったと診断されたという。
祭りの閉会式を撮った動画も、ツイッターで投稿されており、式では、代表者が無事に祭りが終わったと感謝するとともに、次のように述べていた。
「近年の動物虐待の問題など様々な問題がある中で、時代の流れを採り入れながら、先人たちが築き上げてきたこの伝統ある勇壮なおまんと祭りを、熱いおまんと魂を、後世に受け継いでいただけるよう祈念いたしまして、感謝の言葉とさせていただきます」
春日神社の禰宜は10月2日、J-CASTニュースの取材に対し、動画を見た人から電話があり、宮司が確認して関係者と話し合い、公式サイトでお詫びを出したと明らかにした。
「祭りでは、馬を蹴るなど暴力行為をしないようにしています。こうした行為があったのは、神社として残念です。法被で馬を叩くことまで規制していませんが、竹で馬を叩くことは、数年前に問題となって止めることにしました」
今回、なぜ飛び蹴りがあったのかについては、まだ事情を聞いていないとした。左前脚に包帯をしたり眼帯をしたりした馬については、ケガをしたかなどの確認はまだ取れていないという。
三重県桑名市内の多度大社で5月に行われた「上げ馬神事」では、馬が転倒・骨折して殺処分されると、抗議が殺到する騒ぎになり、大社が次回から坂を緩やかにするなどの対策を取ると報じられた。
高浜市無形民俗文化財に指定されているおまんと祭りについて、春日神社では、「多度大社で色々と問題があり、同じ馬の神事ですから、注目されていました。祭りが始まる前にも電話があり、『廃止してほしい』とも言われました。しかし、祭りを止めようという話は出ておらず、伝統ですのでこれからも続けていきたいです。とはいえ、写真や動画がSNSで拡散する時代ですので、その流れに合わせて、やり方を変えないといけないとは考えています」話している。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)