担当者が交代→書籍化予定の作品が没に ベテラン作家から見た「非正規」編集者の功罪

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なぜ「前担当者」の作品を引き継がないのか?

   没になった作品に費やしてきた労力に対する報酬が支払われることはなかった。わかつきさんによれば、出版業界では「成果物に対してお金を払う」考え方が浸透しており、本が発売されてはじめて印税という形で収入を得ることができる。

「すごい簡単に企画書を書き直せと言ってくる人もいますが、その間私たちには1円もお金が入ってこないんです」

   ただし、わかつきさん自身は、「費やしてきた労力に対する補償」などは求めていないという。

「補償を求めるならば作家にも責任が発生するでしょうし、もしその作品が何らかの事情で書けなくなってしまったら、賠償を支払わなければならないなどのマイナス面も出てくると思います。 作家は『本を出す』という博打をうってるんです。売れるときは売れるし、売れないときは売れない。災害やコロナ禍では売れなかったし、運もあります。ある程度のマイナスは飲み込んで、勝つまでじゃんけんを続けていくというのが、作家として生き残っていくための感覚だと思います」

   訴えているのは、「企画会議で通した作品を担当者の一存で没にするのはやめてほしい」という点だ。

   わかつきさんは他の作家のトラブル相談も受け付けており、担当者が変わったとたんに折り合いが悪くなったといった相談は多いという。自身の経験と相談内容を照らし合わせ、担当編集の交代によって企画が流れる背景を次のように考察している。

「昨今は契約社員の編集者が多いです。2年契約であることが多く、その期間に数字を出し、爪痕を残さなければならない状況に置かれています。引き継いだ作家を持ったとしても、それは前の編集者のポイントになります。自分で見つけてきた作家、自分で立ち上げた企画で売りたいと感じていらっしゃるようです」

   厚生労働省の「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」によれば、正規の職員・従業員として働いている雑誌編集者は50.9パーセント、図書編集者も67.7%にとどまる。次に多い就業形態はどちらも、「自営、フリーランス」、「契約社員、期間従業員」の順となっている。

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