Xはこんなに「誤情報」まみれ YouTubeの5倍...EU報告書が明かす実情

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   誤情報や偽情報、いわゆる「フェイクニュース」が飛び交うさまざまなプラットフォームの間でも、こういったものに遭遇する確率は大きな差が出ている。

   欧州連合(EU)の行政執行機関にあたる欧州委員会のヨウロバー副委員長は2023年9月26日、欧州各地で選挙が控えていることを念頭に、各プラットフォームに対して対策強化を求める声明を出した。これに合わせる形で、6つのプラットフォームを比較した調査結果に言及。X(旧ツイッター)が「誤情報・偽情報の投稿の割合が最も高いプラットフォーム」だとして名指して批判された。

  • EUの偽情報対策について記者会見する欧州委員会のヨウロバー副委員長。(写真はヨウロバー氏のアカウントから)
    EUの偽情報対策について記者会見する欧州委員会のヨウロバー副委員長。(写真はヨウロバー氏のアカウントから)
  • EUの偽情報対策について記者会見する欧州委員会のヨウロバー副委員長。(写真はヨウロバー氏のアカウントから)

「あなた方は厳しい法律を遵守しなければならず、私たちはあなた方の行動を監視している」

   欧州委は18年12月に偽情報対策の行動計画を策定。それに基づいた「行動規範」に、現時点でプラットフォーム事業者や広告関係団体44者が署名している。署名者(シグナトリー)にはグーグル、メタ(フェイスブック)、ティックトックなどが含まれるが、Xは23年5月に離脱している。

   欧州委では、ポーランド、スロバキア、スペインの3か国で、6つのプラットフォームを対象に投稿内容を調査。調査項目のひとつが「偽情報の発見可能性」(disinformation discoverability)だ。「センシティブな内容」に占める誤情報・偽情報の割合を示した数値で、最も高いのがXの0.428で、次に高いのがメタの0.313だった。インスタグラム、ティックトック、リンクトインと続き、6つのうち最も低いユーチューブは0.082だった。

   声明では、これを受ける形でXを

「もはや行動規範の対象ではないが、誤情報・偽情報の投稿の割合が最も高いプラットフォーム」

と名指しで批判した。

   EUでは22年にデジタルサービス法(DSA)が施行され、Xもコンテンツ規制の対象になる大規模プラットフォームに含まれている。ロイター通信によると、ヨウロバー氏は記者会見で

「(米X会長の)イーロン・マスク氏は、デジタルサービス法が完全に施行された今、自主規範を離脱したからといって免責されるわけではないことを理解している。だから、ツイッターへのメッセージは、あなた方は厳しい法律を遵守しなければならず、私たちはあなた方の行動を監視している、ということだ」

と警告している。

Xは「DSAの遵守に全力」、それでも調査結果に不満表明

   Xは声明を受ける形で、グローバル行政チームの公式アカウントで、

「欧州における偽情報に関する本日の議論に対し、XがDSAの遵守に全力を尽くしていることを改めて表明する」

と反応する一方で、調査結果を

「我々は、このデータの全体的なフレーミングに同意せず、このデータはメディアで取り上げられている筋書きに合致しないと考えている」

などと批判した。

   今回の欧州委の声明は、ロシアから発信されているとみられる偽情報を念頭に置いており、

「ロシアの対ウクライナ戦争と24年に迫ったEU選挙は、偽情報のリスクが特に深刻で、関連性が高い」
「巨大なプラットフォームは、このリスクに対処しなければならない。特に、選挙前にロシア政府やその他の勢力が活発に動くことを予測しなければならない」

と呼びかけている。

   具体的に進んでいる対策として、署名者が過去6か月行ってきた取り組みも紹介している。例えばユーチューブは、23年1月から4月にかけて、ロシア政府から支援を受けている400以上のチャンネルを終了。グーグルはこれに加えて、政府が資金提供するプロパガンダサイトにリンクしている約300のサイトから広告を削除した。メタ社はファクトチェックの提携先を26社に拡大し、EU内の22言語をカバーしている。ティックトックでは、ロイター通信と新たに提携し、ロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語など、欧州の17言語をカバー。戦争関連の動画832本がファクトチェックの対象になり、そのうち211本が削除された。

   今後プラットフォームが重点的に取り組むべき分野として、(1)小規模な加盟国や言語における、一貫したモデレーション(投稿の監視)とファクトチェックへの投資(2)研究者が作業しやすくするためのデータアクセスや透明性の向上、の大きく2つを挙げた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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