ロシアのウクライナ侵攻をめぐり情報戦が過熱するなか、ロシアの在英大使館がX(旧ツイッター)に書き込んだ内容が偽物だったとして、嘲笑の対象になっている。国営メディアや息のかかったメディアによるプロパガンダは多いが、今回は在外公館が自ら偽情報を発信しており、特に波紋が広がっている。
ウクライナのゼレンスキー大統領がカナダ下院で演説した際に「英雄」だとして紹介された人物が、後にナチス・ドイツの関係者だったことが判明して問題化。ロシア側の発信は、この人物をウクライナが切手にして発売したと主張する内容だ。ただ、画像に映りこんだバーコードは、22年に発行された全く別の切手のもの。「コミュニティノート」でも偽物だと指摘され、書き込みは後に削除された。
カナダ下院での不祥事が格好の攻撃材料に
ゼレンスキー氏が2023年9月22日(現地時間)にカナダで演説した際にロタ下院議長がゲストとして招待していたのがロスラフ・フンカ氏(98)。ゼレンスキー氏の演説後、ウクライナの独立のためにロシアと戦った「英雄」として紹介され、トルドー首相やゼレンスキー大統領を含む会場全体がフンカ氏にスタンディングオベーションした。
後にフンカ氏がナチス関係者だったことが明らかになり、ロタ氏は陳謝。下院議長を辞任することを表明した。
ロシアはウクライナ侵攻の大義名分のひとつとして「非ナチ化」を掲げており、この不祥事は格好の攻撃材料になった。在英ロシア大使館は9月26日夜(日本時間)、
「ウクライナの郵便局は、カナダでゼレンスキーに拍手喝采されたファシストの老人が描かれた切手を発行した。彼らは謝罪するかもしれないが、ウクライナとカナダの政治体制の本質を隠すことは不可能だ。我々は英国政府に対し、このナチズムの展示を明確に非難するよう求める」
という文言とともに切手の写真を投稿。1500回以上リポスト(拡散)された。